コラム  エネルギー・環境  2016.01.26

米国における次世代原子炉開発プロジェクトの動き

 米国エネルギー省(DOE)は、1月15日に次世代原子炉開発プロジェクト公募の選定結果を公表しました。連邦政府のカーボン・フリーエネルギー供給を増やす目標に合わせた今回の公募は、次世代原子炉の設計、建設と運転における技術課題の解決をサポートする趣旨で、昨年8月に民間企業に向けて開始され、計10数件の応募がありました。

 選定されたX-energyとSouthern Companyの両社は、初年度(2016)にそれぞれ600万ドル(約7億円)の公的資金を獲得し、自己調達資金(150万ドル、投資総額の20%)と合わせて、研究開発プロジェクトをスタートします。その後複数年にわたり、上限8000万ドル(約94億円)の公的資金を分配し、2035年のタイムラインにおける実証に向けて研究開発を進めます。

 今回選定された次世代技術は、X-energy社が提案したXe-100ペブルベッドガス冷却炉とSouthern Companyが提案した溶融塩高速炉(Molten Chloride Fast Reactor)の二つの発電用原子炉です。

 前者は、もっとも先進的な安全性能(DOE評価)を持つと同時に従来型原子炉より小さいため、公衆安全を保ちながら、人口密集地域への導入が技術的には可能とされています。技術の成熟度が高く、すでに中国で実証プラントが建設中であるため、研究開発の中心は詳細設計と燃料開発です。

 後者も、もっとも先進的な安全性能を備える設計になっており、広範囲の活用ポテンシャルがあるとされています。

 今回の発表に関して、DOE長官のMoniz氏は、「原子力エネルギーが米国の中心電源の一つとして維持されるために、現時点でこのような技術に投資することが重要である。官民協力による次世代原子力の開発は、将来の低炭素エネルギー供給を可能にする」と表明しました。

 米国の官民協力による原子力開発体制は、DOEが民間向けに提供する競争的資金メカニズムにより実現しています。応募チームは、民間企業がリードしている産官学コンソーシアムです。

 今回選定されたX-energyチームには、企業のBWX Technology、Teledyne-Brown EngineeringとSGL Group、大学のOregon State University、並びに国立研究所のIdaho National LaboratoryとOak Ridge National Laboratoryが入っています。Southern Companyチームにも、企業のTerraPower、民間研究機関のElectric Power Research Institute、大学のVanderbilt University、並びに国立研究所のOak Ridge National Laboratoryが入っています。

 米国では、日本の官主導プロジェクト方式ではなく、このような産官学連携コンソーシアムが研究開発の担い手になっています。