論文  財政・社会保障制度  2016.01.19

地方税徴収に生かすサービサーの活用

月刊『税』(株式会社ぎょうせい)2016年1月号に掲載

はじめに


 地方税や国保、保育料、住宅使用料、母子寡婦貸付金などの自治体債権の徴収に民間企業を活用することが増えてきている。地方税において、コンビニ収納、クレジット収納、コールセンター、インターネット公売などはその一例である。民間企業が自治体債権を扱うときには、公権力の行使に該当する業務は行わないことが決まりとなっており、たとえば、現在、多くの自治体で行っている地方税コールセンター業務は、「自主的納付の呼びかけ業務」として、テレマーケティング会社、人材派遣会社、シルバー人材センターなどが請け負っている。「自主的納付の呼びかけ業務」というのは、公権力の行使に当たらない部分においてという条件はあるが、範囲は明確には決められておらず、公権力に抵触しない範囲で自治体の裁量により業務委託が行われているのが現状である。
 地方税コールセンター業務をサービサーに委託しているところは少ない。それは、他の業種よりもできることに制限があるからである。サービサーは他の業種と異なり、法務省の管轄下で、「債権管理回収業に関する特別措置法(以下、サービサー法という)」をもとに事業を行っている。サービサー法はバブル経済崩壊後の金融機関の不良債権処理を目的として制定されているので、もともと自治体債権を念頭において制定された法律ではない。サービサー法上では、修学資金、奨学金、母子寡婦貸付金、中小企業高度化資金などの貸付金はサービサーが扱うことが可能な債権となっているが、貸付金以外の自治体債権はサービサーが通常扱う金銭債権ではないと定義される。そのため、貸付金以外の自治体債権は非特定金銭債権(兼業債権)として分類され、サービサーが自治体債権を扱うのは、弁護士法の特例として規定されている。
 自治体が抱える公債権・私債権の未収債権はいまだ大量にあり、民間債権回収のプロであるサービサーを活用しない手はない。しかし、サービサーはサービサー法のもとに活動するので、サービサーの得意とする手法を活かしきる環境が基本的に自治体には存在しなかった。先に述べたように、サービサーの管轄は法務省で、一方、自治体の監督官庁は総務省である。また、県営住宅、市営住宅などの公営住宅の扱いは国土交通省であり、それぞれのニーズは異なる。サービサー法上では、貸付金以外の自治体債権に対しては、兼業承認を取得すれば、「案内」業務が行えると規定されている。この案内業務の業務範囲は、総務省や国土交通省、自治体が想像するよりもずっと限定的であると考えた方がいい。
 このような監督官庁の考え方の違いから、サービサーが自治体債権の回収に携わる際に限定的であると感じていた折、平成21年度から業務改善命令を出されるサービサーが続出し、ただでさえ、委託業務範囲の解釈が難しい自治体債権の取扱いを積極的に携わろうとするサービサーは増えなかった。
 そこで、サービサー業界では、内閣府や自治体の声を受け、また自らもこのままでいいのかという思いが募り、自治体債権の回収業務をもっと効率的に行えるよう、平成26年11月、自治体債権に特化した兼業対応ワーキンググループを全国サービサー協会内に立ち上げ、法務省も含め議論を重ねてきた。
 その結果、これまではサービサー法上、サービサーは自治体の自主的納付の呼びかけ業務を「集金代行業務」として請け負っていたが、平成27年5月より、法務大臣より納付勧奨業務の兼業承認が得られれば、国や地方自治体の金銭債権について、「納付勧奨業務」としての受託が可能となった。納付勧奨業務とは、従来の案内業務(集金代行業務)に、「納付意思の確認」、「納付予定時期の確認」、「滞納理由の聞き取り」を加えたもので、自治体はこれまで以上にサービサーに委託しやすい環境となった。
 本稿では、サービサーを活用することで、これまで以上に、地方税をはじめとした自治体債権の回収が進むことを願い、サービサーについて概観し、サービサーが自治体債権回収業務に従事するために取り組んできた兼業対応ワーキングを把握し、自治体がサービサーを上手に活用するためのデータ提供について言及した。...


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