論文 財政・社会保障制度 2015.09.15
はじめに
6回目は北海道美唄市を取り上げる。北海道美唄市は空知地方の中央部に位置し、市内を南北に国道12号と函館本線が平行して縦貫している便利な地域である。美唄とはアイヌ語の「ピオパイ(沼の貝の産するところ)」から由来している。近年では、雪の冷熱エネルギーの活用について研究し、平成11年には世界で初めて雪冷房を導入したマンションが建設された。
かつて北海道には炭鉱が多く存在した。前月号の留萌市も今月号の美唄市も炭鉱町であった。美唄市には三菱鉱業・三井鉱山の大規模炭鉱のほか、中小の炭鉱も多数存在し、道内有数の炭鉱町として栄えた。炭鉱が閉山して以降、国はかつての炭鉱町に対して、地域振興のために支援を行ってきたが、平成13年度に産炭地域振興臨時措置法が失効し、激変緩和措置として行われていた産炭地域に対する国の財政支援が平成18年度で終了した。また、平成16年度には国の三位一体改革により地方交付税が激減したことにより、美唄市の財政は厳しくなった。
一方で、平成14年度より検討していた市町村合併が平成15年12月に白紙となり、美唄市は合併ではなく単独の道を選択し、平成17年2月に「美唄市自立推進計画(平成17~22年度)」を策定した。
加えて、美唄市は平成17年度より市立美唄病院と美唄労災病院(現北海道中央労災病院せき損センター)との統合を目指していたが、平成19年度に断念した。
その結果、美唄市は、規模を縮小して病院経営を継続することとなったが、平成19年度末に市立美唄病院会計の不良債務が23億4950万円まで累増し、一般会計も昭和59年度以降、23年ぶりに実質収支が1億2828万円の赤字となった。そのため、地方公営企業の経営健全化指標では、美唄市の病院事業会計の資金不足比率は平成19年度末で191.7%と、経営健全化基準の20%を大きく超え、それ以降、美唄市は経営健全化計画を実行中である。美唄市は病院事業会計への繰出について、平成14年度から通常の繰出金のほかに毎年2億円の追加支援を行ってきていたが、資金不足を解消するために、平成21年度から平成27年度にかけて総額21億円の繰出金を追加することとした。平成20年度には公立病院特例債(8億3900万円)も発行した。
一方、一般会計についても、財政調整基金は取り崩してきた結果、平成20年度末残高が約14万円とほぼ枯渇し、危機的状況になったが、それ以降は、一般会計決算額は黒字を推移し、平成21~23年度には決算黒字の一部を積み立て、平成24年度末には財政調整基金の残高は約5億2000万円まで回復した。
本稿では、市町村合併と病院統合が頓挫し、自治体運営や病院経営について独自の道を歩むことを選択した美唄市の財政再建の取り組みについて検討する。
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