論文  財政・社会保障制度  2015.07.24

預金の差押・調査の電子化~滞納整理の飛躍的進展に向けて

月刊『税』(株式会社ぎょうせい)2015年6月号に掲載

はじめに


 少子高齢社会が進む中、自治体職員が徐々に減少している。平成6年には住民1,000人あたり9.37人の職員(教員・警察・消防を除く)が配置されていたが、平成22年には7.31人に減少している。バブル崩壊後、新規採用を控えていた自治体は多く、これからも減っていくと予想される。職員の数が減少するということは、以前よりも少ない人数で増え続ける住民ニーズに応えていかなければならないということである。これから先、税務部門にどれだけの人員が配置されるのだろうかと考えても、そう簡単に増えるとは考えにくい。
 このような状況に備えるには、さらなる税務業務の効率化を図ることである。この10年ほどで自治体庁内や自治体間の効率化はかなり進んできた。徴収一元化や共同徴収などはその一例である。また、IT化も進み、eLTAXやコンビニ収納、クレジット収納などのインフラは整った。しかし、まだ効率化できる。その一つが指定金融機関(以下金融機関と略す)との接点部分である。自治体とは切っても切れない関係で、公金収納、地方債の発行、滞納処分の協力など、自治体運営のさまざまな場面で金融機関の存在は不可欠である。しかし、以前から金融機関との事務の非効率も指摘されてきた。非効率の原因は、金融機関も自治体も業務の性質から旧態依然とした事務(文書ありきの事務や押印ありきの事務)が行われているからである。しかも基本的に金融機関は無料で対応している。手数料の課題は、本稿では現状確認と問題提起だけにするが、もう1つの事務の効率化については、預金差押と預金調査の業務の効率化を検討する。以前から電子的に金銭債権の差押(電子差押)までできないかと考えていたところ、数年前に米国ノースカロライナ州で、e-garnishmentと呼ばれる、電子的な預金差押に取り組んでいることがわかった。日本でもできないかと考えていたところ、肥後銀行が自治体と電子媒体の受け渡しによって集中差押を始めていた。まだ完全な電子化とは言い切れないが、それに近い形である。そこで本稿では、預金差押の状況と昨年度の規制改革答申をふまえ、肥後銀行と熊本県の事例を把握し、今後の展開を検討する。また、預金調査についても、現状を把握し今後の展開を述べる。...


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