論文 財政・社会保障制度 2015.07.10
はじめに
第3回目は、この20年の間、再三にわたり財政再建団体や財政再生団体、財政健全化団体に転落しかねない状況になりながら、財政再建に取り組み、明るい兆しがみえてきた岡山県を取り上げる。
岡山県は、24年間にわたる長野士郎元知事時代の積極的な公共事業や大規模事業の実施により、県債残高が嵩み、平成8年度以降、再三にわたり財政再建団体への転落が危ぶまれ、さまざまな行財政改革大綱を発表してきたが、毎年400億円規模の財源不足が発生し、財政再生団体に転落する可能性があったため、平成20年6月に「岡山県財政危機宣言」を発表した。
岡山県がこのように長く財政再建に取り組むことになった主な要因はハコモノ行政(大規模公共工事)である。岡山県は平成9年の「岡山県行財政改革大綱」から現在に至るまで、景気や三位一体改革の影響を受けながら財政再建に取り組んでいる。県民に通常の公共サービスを提供しながら、巨額の負債を解消していくのには時間がかかるため、長期間にわたる戦いとなった。
本稿では、長年にわたり過去の大規模事業投資による巨額の負債と取り組んできた岡山県を概観し、長期間の財政の調整の実態を把握し、ハコモノ行政が及ぼす影響を学ぶことを目的とする。...