コラム 国際交流 2015.06.25
◇ 米国のアジア外交の専門家・有識者のほぼ全員が安倍首相の訪米は大成功(very successful)だったと高く評価した。オバマ政権の外交は失敗ばかりだが、その中にあって日米関係の強化は例外であることを決定づけたとの指摘もあった。
◇ 今回の訪米は外交・安保・経済等各分野で中身の濃い意義のある訪問だった。同時に安倍首相とオバマ大統領との間で個人的に良好な関係を深めることができた点も重要な成果だったと見られている。
◇ 安倍首相の上下両院合同会議での演説は、米国議会関係者の間では、日米両国が致命的に重要な関係であることを示した歴史的な演説だったと評価されている。一部に謝罪の言葉を述べなかったことへの批判もあったが、安倍首相のスピーチに対する高い評価が大多数を占めたことから、批判の声は殆ど注目されることがなかった。
◇ 安倍首相訪米がこれほど高い評価を得られた要因は、新たな日米防衛協力のための指針(訪米中に日米両国で了承を発表)に基づく防衛協力の強化とTPPの成立への協力に代表される、安全保障と経済の両面にわたる日本の貢献にある。
◇ 有識者からは現在オバマ政権に対して自ら進んでこれだけの貢献を示してくれる国は日本しかないとの高い評価が示され、一般国民を対象とする世論調査においても、日本に対する信頼度が改善している。しかし、学者の間には依然として安倍政権の歴史認識問題への対応に対する不信感が根強く残っている。
◇ 5月20日のCNNニュースで、米軍の対潜哨戒機に乗り込んだ記者が、中国が南シナ海の南沙諸島で埋め立てている人工島の様子とその際に同機に対して発信された中国海軍による退去命令の音声を報道した。それを機に、米国民の間で中国を批判する声が急速に広がった。ワシントンDCの有識者の間でも、対中強硬論が強まっており、米中関係に詳しい学者・有識者の多くがこの状況を憂慮している。
◇ 中国の内政事情に詳しい専門家は、米国がすぐに強硬策に出ることは適当ではないとの見方で一致していた。それは、この人工島の埋め立てを拡大したとしても、軍事的には大した脅威にならないうえ、習近平主席自身の意図がどこにあるのかもはっきりわかっていないとの見方によるものである。今後中国政府の真意を探り、徐々に南シナ海問題の鎮静化を図り、事態を収拾させる方法が賢明であるとの見方が多い。
◇ 米国がAIIBに参加しなかったことに対して、殆どの東アジア外交専門家は米国の不参加を厳しく批判している。このため、日本が米国に歩調を合わせて不参加の姿勢を保っていることを評価する見方は、学者・有識者の間には全くなかった。むしろ、米国が参加しなくても日本が参加することを期待する意見が多い。