論文  財政・社会保障制度  2015.06.10

財政再建への道のり-どん底からどのように抜け出したのか<大阪府泉佐野市:財政健全化団体からの脱却>

『地方財務』(株式会社ぎょうせい)2015年5月号に掲載

はじめに

 第2回目は、大阪府泉佐野市を取り上げる。

 泉佐野市は財政再建団体への転落を懸念し、平成16年3月に財政非常事態宣言を行い、集中改革プランを実行していた。しかし、財政健全化法が制定されたことで、平成20年度決算で連結実質赤字比率と将来負担比率が基準を超えたため、財政健全化団体となった。そこで、平成21年度から平成24年度にかけて財政健全化計画のもと、財政再建に取り組んだ結果、平成25年度決算で財政健全化団体から脱却した。

 泉佐野市が平成16年に財政非常事態宣言をした背景には、関西国際空港(以下、関空と略す)の開港に関連して固定資産税の税収が伸びると判断し行った都市基盤整備や施設整備があった。しかし、バブル経済が崩壊したため、年間300億円超の税収予測に対して、実際の税収は年間約100億円も下回ることとなり、整備のために発行した地方債の償還が大きな負担となった。なかでも、平成8年5月に開館した「総合文化センター」の建設と、平成9年10月に移転した「りんくう総合医療センター・市立泉佐野病院(以下、市立泉佐野病院と略す)」の建設のために発行した起債の影響が大きかった。そして、宅地造成事業や病院事業の赤字が続き、平成20年度決算で、将来負担比率と連結実質赤字比率が基準を超えたため、財政健全化団体となり、宅地造成事業会計と病院事業会計を廃止することになった。宅地造成事業会計の逼迫は、旧市立泉佐野病院跡地の売却損であり、病院事業会計は、市立泉佐野病院の毎年10億円の医業収益の赤字が要因である。病院は独立行政法人となり存続している。

 関空開港という大きなプロジェクトのお膝元に存在する自治体として、常に関空の影響を受けながら、新たな挑戦であるが難しくもある行政運営を行うこととなった泉佐野市の10年間に及ぶ、さまざまな財政再建の取り組みについて検討する。...


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大阪府泉佐野市:財政健全化団体からの脱却