コラム 国際交流 2015.05.15
◇ 第1四半期の実質成長率は前年比+7.0%と、昨年第4四半期(同+7.3%)に比べて下落した。今回面談した政府関係機関の専門家の多くが下振れ圧力を懸念していた。このため、先行きも金利の引下げ、預金準備率の引下げ、財政支出の拡大など小刻みの経済刺激策が追加される可能性が高いとの見方が一般的。
◇ 政府内部で景気の下押し圧力に対する懸念が強い背景は、第1に、地方における過剰設備を抱えている産業分野での大型倒産表面化への懸念、第2に、そうした倒産が表面化した際に必要となるセイフティーネットの整備等の遅れに対する懸念である。
◇ 中国人民銀行の周小川行長は、金利自由化を積極的に推進する姿勢を明確にしている。これに対して政府内部には預金金利の上限撤廃が貸出金利の上昇を招き、企業の資金調達コストを引き上げ、景気を下押しするリスクを懸念し、金利自由化に慎重な考え方も多い。
◇ 「新常態」(ニューノーマル)の経済政策運営方針の下、経営が非効率な中国企業における資金繰りが悪化している。このため、昨秋以降一部の日本企業では売掛金の資金回収が困難となっている事例が見られ始めている。
◇ 最近の日中関係改善の動きにもかかわらず日本企業の対中直接投資積極化の動きは感じられていない。自動車、スマホ関連、小売・物流を中心に積極的な展開に取り組んでいる日本企業の大半はすでに中国国内市場で成功している企業ばかりであり、対中ビジネスの二極化構造がますます鮮明となっている。
◇ 中国企業の日本企業との提携意欲、地方政府の日本企業誘致の積極性はここへきて一段と高まりを見せている。これには中国企業の関心の対象の高度化に加え、最近の日中関係改善も大きく影響している。中国国内のTV番組等でも中国は日本企業に学ぶべきことが多いという論調が強まってきている。
◇ 日中関係改善は文化交流にも好影響を与え、最近まで中国国内での公演許可が下りなかった日本のアーティストによる歌舞伎、コンサートなども再開され、好評を博している。
◇ アジアインフラ投資銀行の設立準備状況に関する中国筋の情報によれば、組織運営、融資基準等のルール設定は、参加国間の合議内容を尊重しながら、基本的に世界銀行、アジア開発銀行等従来の国際開発銀行の基準に準拠して準備されている模様。
中国経済は安定を持続しているが、下振れリスク懸念が存在~中国側の日本企業との提携意欲は拡大の方向~<北京・成都・上海出張報告(2015年4月20日~5月1日)>