論文  財政・社会保障制度  2015.05.12

財政再建への道のり-どん底からどのように抜け出したのか<滋賀県栗東市:新幹線新駅設置計画中止からの立て直し>

『地方財務』(株式会社ぎょうせい)2015年4月号に掲載

はじめに:本連載を始めるにあたって

 本連載では、今月から、財政健全化法の指標が悪化したものの、その後回復した、または回復途中の自治体に着目し、その実態を明らかにしていく。

 夕張市の破綻後、財政健全化法が制定され、今までよりも、財政のチェック機能は上がっているが、もっと迅速に財政難の兆しをつかむことができないだろうかと考えている。そのためには、財政難に陥った自治体がどのような変遷をたどり、どの時点が財政難に陥るきっかけとなったのかを把握する必要があるだろう。また、財政難に陥っても回復した自治体の事例は、多くの自治体を勇気づけることになり、今後財政難に陥る自治体が出てきても、解決策を知っておくことは重要である。

 第1回目の今回は、滋賀県栗東市を取り上げる。滋賀県栗東市は昭和58年から27年間にわたり地方交付税不交付団体であった。しかし、平成19年に、嘉田由紀子前滋賀県知事の政権公約であった新幹線新駅(南びわ湖駅)設置計画の中止が決定されたことで、栗東市土地開発公社(以下、公社と略す)が新駅設立のために先行取得してきた土地の利用目的が失われ、それを契機に資金繰りが苦しくなり財政難に陥った。そして栗東市は新幹線新駅計画の中止後のまちづくりに取り組むと同時に財政再建にも取り組まなければならないという難しい状況に直面した。平成20年度に「財政再構築プログラム」、平成22年度に「更なる財政再構築プログラム」、平成24年度に「(新)集中改革プラン」を実行し、財政再建に努めた。計画中止後のまちづくりについては「後継プラン」を構想し、新たなまちづくりのビジョンのもと、インフラ整備や企業誘致等に励んでいる。

 本稿では、当時、メディアを賑わせた新幹線新駅計画中止によって、新駅ができるはずだった栗東市の将来像の大きな変更の実態と、それにより財政の変更を余儀なくすることとなり、どのように財政再建を進めていったのかについて検討する。...


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滋賀県栗東市:新幹線新駅設置計画中止からの立て直し