コラム 国際交流 2015.04.21
◇ 東アジアの先行きを展望すれば、北朝鮮は不安定な状態が続き、中国が新常態下の高度成長持続を背景に急速な軍備増強を継続する一方、米国は財政難等から防衛力増強が難しい状況が続く可能性が高い。その状況において防衛力バランスを維持するには、米国・日本・韓国の3国の防衛協力強化は不可欠である。しかし、日韓関係が悪化したままでは、それを進めることができない。この点を米国は憂慮している。
◇ 韓国人は一般的な日本人が思っているほど反日ではない。韓国の書店に並ぶ日本に関する書籍の中で反日をテーマとするものは少ない。反日デモに参加する人もごく一部に限られている。韓国人の間で日本旅行や和食の人気は相変わらず高い。
◇ 足許の状況を比べると、日本における嫌韓感情は韓国における反日感情より強い。
◇ 韓国政府の外交政策上では一般庶民の世論が大きな制約条件となっている。日本が絡む問題に対しては通常とくに厳しい反応が示される。些細な問題でも韓国政府が日本側に譲歩、あるいは配慮すると受け取られると、すぐに猛烈な批判が寄せられる。米国や中国についてはこれほど深刻な状況ではない。韓国は民主主義に依拠しているため、こうした庶民の反応を無視することはできない。
◇ 日本政府が過去の出来事に関し、反省を表明しながら、細かい数字に関する反論を行っている姿勢は、反省の言葉に前提条件を付しているように感じられてしまう。そのような反省は本心ではないと多くの韓国人は受け止める。日韓両国関係の改善を願う韓国人としては、こうした日本政府の姿勢が何とももどかしく感じられる。
◇ 両国において世論に大きな影響を及ぼしているのはメディアである。メディア報道が両国における反日・反韓感情を煽り、日韓関係悪化の土台を形成している。政治リーダーが世論の反発を乗り越えて、日韓関係改善のために積極的に動くことは難しい。
◇ 日韓両国の関係改善に動くには、両国の政治リーダーの間で良好な意思疎通が確保され、関係改善のための具体的な方法について率直に意見交換できるパイプが存在することが大切である。本年2月に大統領秘書室長に就任した李丙琪(イ・ビョンギ)氏は、知日派で朴槿恵大統領の信頼も厚い。同氏と安倍内閣の重要閣僚との間で緊密な対話ルートを構築すれば、両国間の意思疎通は格段に改善する可能性がある。
◇ AIIB参加問題に関し、韓国政府は昨年11月以降、対応方針を検討し続けてきた。 水面下で関係国と緊密に情報交換を行っていたため、3月入り後、英国の参加表明を機に主要国が相次いで参加表明する動きもある程度予想していた模様。
日韓関係改善への展望、韓国政府のAIIBへの対応など~日米中関係の視点から見た日韓関係のあり方~<韓国出張報告(2015年4月2日~3日)>