コラム  国際交流  2015.03.25

安倍首相訪米時の講演に対する期待、日米中関係、AIIB等について<米国出張報告(2015年3月2日~13日)>

◇ 安倍首相の米国公式訪問(4月下旬)における最大の注目点は安倍首相が日本の首相として初めて、上下両院合同会議においてスピーチを行うかどうかという点である。報道によれば、ベイナー下院議長が近々これを了承する可能性が報じられている。

◇ 米国のシンクタンクや大学の著名な東アジア外交の専門家は、米国政府・議会関係者に対し、安倍首相の上下両院合同会議における議会演説(日本の首相としては初めて)の実現を求めている。しかし、今回の出張中に筆者が彼らと面談した時点では、実現はかなり難しいと予想されていた。

◇ 両院合同議会演説が実現するには、TPPが安倍首相訪米前に日米間で妥結すること、および在米韓国コミュニティーによる演説反対の鎮静化という2つの条件をクリアすることが必要であり、そのハードルはかなり高いと見られていたためである。

◇ 今年予定されている安倍首相のいくつかの重要演説において、日米の多くの有識者が期待する内容は、日本が世界に対してどのようなビジョンを示し、どのような貢献を果たそうとするのかという未来志向の中味である。歴史認識問題に関するキーワードが入った、入らなかったといった議論は不毛であると考えられている。

◇ しかし、歴史認識に関する表現が不十分であると見られれば、批判に晒され、一般的な人々の関心はその話題に集中してしまう。そこでキーワードとして注目されている言葉を全て型どおりに演説の中に盛り込むことなどにより、不毛な議論を回避し、未来志向の中味が正当に評価されるようにすることが望ましいとの見方が多い。

◇ 最近、米国内の日本総領事館の総領事や幹部職員が、米国人の歴史認識への対応を強化している。具体的には、米国の有識者や学者の日本に関する歴史認識が日本政府の公式見解と異なる場合、これを改めるよう求めている。しかし、日本政府の活動や対応は米国民の心情的反発を招くため、副作用としての外交面でのマイナス効果が大きく、日本政府が意図している方向と逆の効果を持っていると指摘されている。

◇ 中国の王毅外相の2月の国連安保理公開討論会での発言が、日本を暗にけん制したと受け止められている。しかし、昨年初以降の王毅外相の発言内容を比較してみると、徐々に対日融和的に変化してきているように見える。

◇ 習近平政権による反腐敗キャンペーンは広く国民からの支持を集め、習近平国家主席本人および同政権の政治基盤は安定化している。しかし、中国の政治は複雑であり、今後反対勢力が巻き返しに出てくる可能性は十分考えられるとの見方がある。

◇ 米国政府では昨秋以降、AIIBに対する慎重な姿勢を崩していないが、本年入り後、若干その姿勢に変化が窺われている。


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安倍首相訪米時の講演に対する期待、日米中関係、AIIB等について<米国出張報告(2015年3月2日~13日)>