論文  エネルギー・環境  2015.02.18

CCS(二酸化炭素の回収と貯留)の現状と展望

 地球温暖化防止を目的とした「排ガスからのCO2回収技術の開発研究」が国際的に開始されたのは1990年代初頭である。1992年アムステルダムで開催された第1回CO2回収に関する国際会議(The First International Conference on Carbon Dioxide Removal)では、実証あるいは商用規模の様々なCO2回収技術とともに、EOR(原油増進回収)、地中貯留、及び海洋処分などの利用・貯留技術も発表された。しかし、地球の温暖化緩和の枠組みの中で、CO2回収技術と貯留技術とが統合あるいは連携した技術として十分に意識されていたとは必ずしも言えなかった。

 その後、1996年9月に北海のノルウェー沖合Sleipner鉱区で天然ガスからCO2を回収し、地中に圧入する事業が開始されたことを契機に、CCS(CO2の回収・貯留)技術は、回収と貯留が統合された地球温暖化対策として現実的な様相を帯び、多くの国でその研究開発が活発になった。CCSに関する2005年以後の主要な国際的認識の経緯は以下のようにまとめられる。

・2005年:IPCC WGⅢからCCSに関する特別報告書が刊行され、CCSは地球温暖化緩和策としてその役割が一層明確になった。
・2008年:G8(洞爺湖 日本)において、CCSは地球温暖化緩和のための政策課題としても認識され、実証・普及に向けた政治的にハイレベルな合意がなされた。
・2009年:IEA Blue Mapシナリオ(2050年に温室効果ガス濃度を450ppmに安定化するシナリオ)に基づくCCSのロードマップが報告され、このシナリオではCCSが全体の約20%のCO2削減に寄与することが期待された。このロードマップは最近更新されたが、化石燃料及び炭素集約的産業が続く限りCCSは不可欠であると明示されている。
・2011年:UNFCCC(国連気候変動枠組条約)締約国会議においてもCCSをCDM(クリーン開発メカニズム)プロジェクトとして実施することの適合性が議論され、COP17(第17回会合、2011年ダーバンで開催)においてCCSをCDMプロジェクトとして実施するための手順書が採択された。

 最近のIPCC AR5 WGⅢのアセスメント報告書においても、CCSはバイオエネルギーとの組合せも含めて、エネルギー部門、特に火力発電部門及び産業部門からのCO2削減に大きく寄与することが期待されている。

 このように、現在、CCS(CO2回収・貯留)は地球温暖化の緩和のためには不可欠な技術であるとの国際的認識はますます高まってきている。一方、CCSには大きな期待がかけられているものの、この10年間に、火力発電部門あるいは産業部門におけるCCSは実証段階においてすら十分な進捗が得られていないのが実状である。ここでは、長年にわたってCCSの研究に携わってきた横山隆壽氏(元CIGS主任研究員、エネルギー2050研究会メンバー)に委託し、国内外のCCSプロジェクトの現状と普及のための課題について、論文をまとめた。


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