メディア掲載  国際交流  2014.12.18

今だから見える、台湾企業とともに中国市場を開拓する重要性

JBpressに掲載(2014年12月18日付)

 先月下旬、27年ぶりに台北を訪問した。滞在した正味2日半の間に垣間見た街全体の印象は、北京や上海の中心街のような派手さはないが、日本に近い雰囲気の、落ち着いた先進国の市街地だった。


■日本と台湾の共通性
 日本と中国の間を毎年数回往来している私にとって、外観はとくに目新しい印象はなかった。しかし、建物の細部の仕上げの様子を見た時、また、ホテルやレストランのサービスに接した時、中国との大きな違いに気が付いた。

 今回台北で宿泊したホテルは観光客用の比較的小さなホテルで、台北に駐在しているビジネスマンの友人たちも名前を知らない、オフィス街の中心部から少し離れたところにある、中級のホテルだった。

 ホテルの内装は高級でも新しいものでもなかったが、室内の塗装などの仕上げを見ると、日本のホテルやオフィスと同じように手を抜かない几帳面な仕事ぶりが目に付いた。

 バス・トイレの水回りを見ても、中国や米国のホテルでは、もう少しグレードの高いビジネス用のシティホテルですら水の出が悪かったり、バスタブの排水が詰まり気味だったりということはしばしばである。ましてやウォシュレットは見たことがない。

 これに対して、今回宿泊した台湾の中級ホテルは水回りも日本国内のホテル並みに快適で、ウォシュレットまでついていたのでびっくりした。

 また、商店で買い物をしても、レストランで食事をしても、どこの店員もサービスが丁寧で親切だった。タクシーも清潔で、運転手のマナーも日本と変わらなかった。

 短い滞在だったため、十分なサンプルとは言えない面もあると思うが、総じて日本に非常に近い感覚でモノづくりやサービスが行われている印象をしばしば受けた。派手さはないが、何事にも手を抜かず、行き届いた心配りできちんとしているという点が日本との共通性を強く感じさせた。

 日常的にこのような製品・サービス水準を追及しているという点は中国とも米国とも異なる。こうした日本的な感覚を共有する台湾の企業や人々であれば、日本企業の製品・サービスの質の追求へのこだわりを十分理解できるはずである。そこから相互理解と相互信頼も生まれやすい。

 その意味で、日本企業が海外でビジネスを展開する時、台湾企業は良きパートナーになるのではないかと感じた。


■台湾企業との協力の重要性に対する認識が乏しかった背景
 これまでも日本企業が中国に進出する際に、台湾企業のサポートを活用するメリットは指摘されていたが、実際にそれを活用している日本企業はごく一部に限られている。

 それはある意味当然である。そもそも日本企業が中国ビジネスを展開する場合、つい数年前までは中国の安くて豊富な労働力を活用して、生産コストを引き下げることが主目的だった。いわば中国は工場と考えられていた。その時代は日本企業と台湾企業は互いにコストダウンを競うライバル関係にあった。

 多くの日本企業が中国を市場と見るようになり、中国国内市場での販売拡大が主目的となったのは2010年以降である。その直後から、漁船衝突問題や尖閣問題などを背景に、日中関係は悪化の一途を辿り続け、中国と言うとリスクばかりが強く意識されるようになった。

 そうした状況下でも一部のグローバル企業はしたたかに中国市場を開拓していたが、大半の日本企業は最近の市場の実態を調べもせずに、中国を避けるケースが多くなってしまった。

 中国市場に対して消極的な日本企業であれば、台湾企業のサポートを得て、中国市場を開拓しようとするインセンティブが湧いてこないのは当然である。


■これから増える台湾企業との協力関係
 先月安倍総理と習近平主席が首脳会談を行った。これを機に日中関係が2006年9月の安倍総理訪中後のように劇的に改善するとは考えにくい。しかし、首脳会談が実現したことによって、交流が途絶えていた両国政府間の交流が徐々に復活し始めている。この変化は両国間の政治経済文化交流にプラスに働くはずである。

 元々本年初以降、中国政府の対日外交姿勢は政経分離の方針が明らかになってきていたため、中国ビジネスに積極的な日本企業の間では安心感が広がっていた。

 今回の首脳会談実現により、その安心感がより多くの企業に広がっていくことが予想される。それとともにより多くの日本企業の中国国内市場開拓への取り組みが積極化するものと考えられる。

 そうなれば台湾企業によるサポートの重要性が改めて見直され、台湾企業との提携を模索する動きが広がっていく方向に向かうはずである。台湾企業の多くはすでに中国市場の奥深くまで入り込み、巨額の利益を上げるなど、大成功を遂げており、中国市場と台湾企業は切っても切れない関係になっているからだ。

 それに比べて日本企業は中国市場の実態や潜在的なチャンスの大きさに対する認識が不十分である。しかも、台湾企業のように中国人と同じ言語を使い、中国人の心情を正確に理解することはできない。

 以上の点を考慮すれば、今後日本企業が中国市場にチャレンジする場合、日本企業の製品・サービスへのこだわりの部分も良く理解し、中国市場にも精通している台湾企業との協力が極めて重要な意味を持つことは明らかである。

 中国を工場としか見ていなかった、2010年以前の時点では殆どの日本企業がその必要を感じていなかった。しかし、中国を市場として捉えるようになった今、台湾企業との協力関係の重要性を認識する日本企業が増えてきているのである。


■台湾企業とともに世界市場へのチャレンジを
 台湾企業との協力により中国市場の開拓に成功すれば、さらにその先の展開も期待できる。

 台湾企業は華僑のグローバルなネットワークを持っていることもあって、グローバルな販売力や経営戦略の面で日本企業より優れている企業が多い。一方、日本企業は生産管理や技術開発面で優れている。中国市場での成功には、この相互補完的な長所の組み合わせが重要である。

 いまや一流のグローバル企業が鎬を削る中国市場での競争における勝利は世界市場での勝利を意味する。日本企業が台湾企業と組んで中国市場で一定の成果を上げることに成功すれば、次はそのコンビで世界市場でも十分勝負できるということである。

 このように日本企業と台湾企業の協力関係には、中国市場開拓での協力を介して世界市場の開拓へと向かう新たな道が開けてきている。

 以前の内向きの日本企業では台湾企業と組むメリットの大きさを十分認識できなかった。しかし、多くの日本企業が中国市場の開拓に真剣に取り組まざるをえなくなった現在、台湾企業との協力の重要性は明確である。のみならず、その先の世界市場への展開も展望できるようになっている。

 今回の首脳会談を機に、改めて中国ビジネスへの取り組みを考えようとしている日本企業は、着実に増加していくと思われる。中国市場開拓から世界市場を目指す日本企業にとって、台湾企業との協力関係の構築は今後の重要な選択肢の一つである。