コラム 財政・社会保障制度 2014.10.16
1951年に社会福祉法人制度が発足して以来一度も業界全体の財務諸表の集計が行われていないため、財務面から見た社会福祉法人の実態が不明のまま推移してきた。そこで、政府が社会福祉法人に対し2013年度の財務諸表を開示することを要請、厚生労働省が集計分析作業に着手している。しかし、その結果が公表されるのは2015年春以降の見込みである。
一方、社会保障審議会福祉部会、規制改革会議等では社会福祉法人制度改革が活発に審議されている。その内容を国民が評価するためには多様な施設を経営する社会福祉法人の財務構造の情報が必要と思われる。そこで、厚生労働省の本省・地方厚生局がホームページで開示している同省所轄の施設経営社会福祉法人350法人の2012年度財務諸表から収支率、内部留保、金融資産等に焦点をあて集計を行った。
その結果、経常収支差額率は全体平均が4.21%だが障害者施設が8.59%、保育所が7.31%と顕著に高いこと、同じ施設種類の法人間でも経常収支差額率、会計上の内部留保(その他積立金+次期繰越活動収支差額)、純金融資産(金融資産マイナス借入金)に大きな格差があること、等が確認できた。厚生労働省所轄の社会福祉法人は複数の都道府県にまたがる比較的規模が大きな事業体であるため、都道府県所轄、市区所轄の社会福祉法人と財務構造が異なる可能性がある。しかし、今回の集計結果は社会福祉法人制度改革を巡る論点整理に非常に役立つように思われる。
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