コラム 国際交流 2014.06.30
◇ オバマ大統領は5月28日、ウェストポイントの陸軍士官学校卒業式において、外交政策の基本方針について演説を行った。これについては、米国としてどのような外交基本戦略の下に、何を実践しようとするのかという大きなビジョンが示されていないとのネガティブな評価が大多数の国際政治学者・有識者の間で共有されている。
◇ ヒラリー・クリントン前国務長官が次期大統領に就任することを予想する見方が多い。そうなれば同じ民主党でも外交政策等の方向はかなり変化するとの見方が民主党系および共和党系両サイドの有識者にあった。
◇ 安倍政権の政策運営に対しては、集団的自衛権の容認に向けた本格的検討、普天間基地の移転に向けた具体的な進展、日米防衛ガイドラインの見直しによる日米防衛協力の強化など、日本が米国のイコールパートナーとして果たすべき役割を明確にする方向で努力を重ねていることに対して、一様に高く評価している。それに加えて、アベノミクスが一定の成果を上げ、日本経済が回復に向かっていることも高く評価されている。ただし、歴史認識問題に関する不信感は依然払しょくできていない。
◇ 安倍政権に対する積極的な評価の広がりを背景に、米国のイコールパートナーとして、日韓関係の改善、6か国協議への協力、米国のリバランス政策との協調など、日本が幅広い分野においてより積極的な役割を果たすことへの期待が強い。
◇ 多くの有識者は、最近の日韓関係の悪化を背景に韓国が中国に接近していることに強い懸念を抱いている。米国は、安全保障面で対外的強硬姿勢を強めている中国に対して、日米韓3国の緊密な協力の下に、より有効な対策を実施することが必要であると考えている。日本が以上のような米国の戦略を理解し、日韓関係改善に向けてより積極的に行動することを米国は強く望んでいる。
◇ 南シナ海、サイバー攻撃等様々な分野の問題において、米国の対中外交姿勢は徐々に厳しいものとなってきていると見られている。ただし、こうした状況下でも、米中両国間での軍事対話は継続されていることから、米中関係は悪化方向一色ではない。
◇ 最近中国人民解放軍は、少しずつではあるが着実に行動範囲を拡大し続けている。この傾向が変わらない限り、中長期的には日中間で武力衝突が生じるのは時間の問題との見方がある。そのきっかけは故意ではなく、アクシデントによる衝突の可能性が高い。そうした不測の事態が生じた時に、両国が冷静に行動するためには、両国の首脳間に即座に相談できるホットラインの存在が重要である。同時に、日本の防衛力の優位性が日中間の軍事的摩擦拡大を防ぐ抑止力として機能すると考えられている。