メディア掲載  財政・社会保障制度  2014.04.16

アベノミクスと医療改革(第2回)医療財源制度のガバナンス

医療経済研究機構 Monthly IHEP 2014 4月号No.229 に掲載

国民合意を容易にするガバナンスの視点

 医療制度には医療提供体制と医療財源確保方法の二面がある。その分類の切り口として公中心、民中心といった基準が使われることが多いが、具体的仕組みのあり様は、仮に公中心あるいは民中心であってもその国の医療制度の歴史、社会・経済の構造、人口動態等により大きく異なる。しかし、医療サービスの基礎である医学は世界共通である。一国の医療財源確保の方法は、税金、保険料、患者自己負担という3要素の組み合わせであることも同じである。さらに、その組み合わせの外見が異なっていても、現役世代の医療費については現役世代が全額負担、高齢者医療費の大部分も現役世代が負担、高齢者医療費の一部を高齢者自身が負担、というルールが制度設計上の基本原則になっている。そして、先進諸国における医療改革の共通テーマとして地域包括ケア、予防による医療費抑制、給付と負担のバランスの公平化などが掲げられている。

 このように外見や各プログラムの名称は異なるが制度設計の基本構造に共通点が多い各国の医療制度の優劣を判定する場合、改革案に対する国民のコンセンサスが成立しやすいか否かという視点が重要なように思われる。つまり、少子高齢化や財政難など医療制度設計の前提条件が大きく変化したことを受けて給付と負担のリバランス改革を大胆に行いたい時に、国民の合意を得やすくするための仕掛けが予め医療制度に組み込まれているか、という判定基準である。これは、その国の医療制度全体のガバナンスの妥当性評価とも言える。第1回で取り上げたIntegrated Healthcare Networkと非営利ホールディングカンパニーは、地域包括ケア体制構築を目的に各国が採用した医療提供体制の経営資源最適配分のためのガバナンス強化の仕掛けに他ならない。そこで、本稿では医療財源制度のガバナンスについて考察してみたい。・・・


<医療経済研究機構より許可を得てMonthly IHEP 2014 4月号No.229より転載。同機構への許可なく無断で記事転載を禁じる。>

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