コラム  国際交流  2014.02.04

安倍首相の靖国参拝の影響と日本企業の対中投資動向―中国経済は引き続き良好で安定した状態を維持―<上海・広州・北京出張報告(2014年1月13日~1月24日)>

◇ 昨年第4四半期の実質成長率は前年比+7.7%となり、前期(同+7.8%)を若干下回った。昨年は通年でも同+7.7%と前年比横ばいとなり、一昨年まで2年連続で低下していた成長率が下げ止まった。年間を通じて雇用、物価とも安定を保持しており、マクロ経済全体としては引き続き良好で安定した状態を維持している。とくに物価は1990年代の市場経済導入以降、現在ほど安定している時期はこれまでなかった。

◇ 中長期的に見れば、引き続き潜在成長率の低下に合わせた緩やかな下降局面が続くと予想されている。今年の成長率は7.5%前後との見方が大勢である。

◇ 昨年上半期はシャドーバンキングの急拡大を背景に上海、北京等沿海部主要都市で不動産価格が高い伸びを示した。しかし、その後、政府が銀行貸出の内容に対する管理を強めたほか、シャドーバンキングに対する監視も強化したため、社会融資総量の伸び率が低下に向かった。それと共に不動産価格の上昇率も鈍化した。

◇ 12月26日の安倍首相による靖国神社参拝直後から年末までの数日間、多くの日本企業が一昨年秋の尖閣問題発生直後と同じような反日デモや日本企業に対する放火・破壊行為を警戒し、不安を抱えながら身構えた。その後目に見える形での実害は生じなかったため、年明け後、日本企業の間では徐々に安心感が広がった。

◇ 今回の中国政府の日本に対する憤りは前回の尖閣問題直後以上のレベルに達しており、政府間交流の停滞については、過去最悪の状況に陥っていると考えられる。しかし、中国政府は、政府与党とその他の政党、民間企業等とは区別して扱い、日本企業との経済交流についてはとくに制限せず、政経分離の方針を採る模様。中国の地方政府、国有企業と日本企業との交流も制限を受けない見通し。

◇ 昨年10月以降、中国国内市場における日本車販売が急伸している。今後日本車販売の好調が持続すれば、部品メーカーを中心に続々と新規能力増強投資案件にゴーサインが出されて、投資拡大の動きが加速するのは時間の問題と見られている。

◇ 昨年の日本の対中直接投資は通年で前年比-4.3%(商務部発表)と、3年ぶりに減少した。しかし、大手邦銀の実務上の実感としては昨年4月頃から雰囲気が変化し、企業からの相談件数が増え始め、下半期はむしろ回復に向かっている。

◇ 自動車関連の増産投資拡大の動きが加わり、この2,3年止まっていた前向きの投資の検討が始まっていることから、今年の対中投資は再び増加に転ずる可能性が高い。


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安倍首相の靖国参拝の影響と日本企業の対中投資動向―中国経済は引き続き良好で安定した状態を維持―<上海・広州・北京出張報告(2014年1月13日~1月24日)>