レポート 外交・安全保障 2013.11.07
1.概要
2013年8月3-4日、当研究所は都内において第14回PAC政策シミュレーション「邦人保護と危機管理」を実施した。本シミュレーションは2013年1月16日にアルジェリアにおいて発生した人質拘束事件の教訓を踏まえ、海外に展開する日系の現地法人の危機管理のあり方を再考することを目的とした。今回のシミュレーションでは、西アフリカにある架空の国家・ニコンダ共和国に進出した日系企業のプラント及び現地事務所が、現地武装勢力に襲撃され、従業員の多数が人質となるシナリオを採用した。本シミュレーションの焦点となったのは、①現地の治安情勢に即した企業の危機管理体制の強化、②官民及び企業間の情報収集・情報共有のあり方、③現地政府及び現地情勢に影響力を持つ外国政府との関係強化、④人質事件発生後の官民協力・危機対応体制・結果管理・メディアや被害者家族への対応といった諸点であり、2日間のエクササイズを通じて多くの教訓と課題が抽出された。
本シミュレーションには民間企業の危機管理担当部門関係者・現役政治家・官僚及びOB・ジャーナリスト・学者など約80名が参加した。当研究所の政策シミュレーションに現役政治家が参加したのは初めてのことであり、シナリオで焦点となった官民連携のあり方について、よりリアリティを追求した真剣な企画を実施することが可能となった。
シミュレーションのチームとプレイヤーは、日本政府(首相官邸・国家安全保障局・外務省・関係省庁等)、民間企業(ニコンダ共和国進出企業3社及び危機管理コンサルティング会社)、ニコンダ共和国政府、フランス政府、メディア(日本メディア・ニコンダ政府メディア)、テロリストに分かれた。8月3日(土)午前から翌日4日(日)午前までの実質24時間にわたり、全てのプレイヤーが刻々と悪化するニコンダ情勢、プラント襲撃と人質事件の発生に対して議論、政策対応、交渉、合意形成、報道とそれへの対応を行い、リアリティの高い政策決定過程が再現された。・・・