コラム  国際交流  2013.09.10

「東京=ケンブリッジ・ガゼット:グローバル戦略編」第53号(2013年9月)

小誌は大量の資料を網羅的かつ詳細に報告するものではない-筆者が接した情報や文献を①マクロ経済、②資源・エネルギー、環境、③外交・安全保障の分野に関し整理したものである。紙面や時間の制約に加えて筆者の限られた能力という問題は有るが、小誌が少しでも役立つことを心から願っている。

 適確な海外情報を得ることは本当に難しい。同僚の瀬口清之氏は、中国関連情報について興味深い点を指摘している--"対中ビジネスの取り組み方に関して企業間に二極化が生じ、これはメディア報道から受ける影響に関する企業間格差と関連している"、と(「尖閣問題以降の中国に関する情報ギャップの拡大と日本企業の二極化」 本年6月)。これに関し1980年代の日米貿易摩擦を思い出している--当時、日本経済に疎い米国企業--モトローラやベクテル等--が、日本市場を熟知し、しかも既に成功を収めていた企業--ジレットやコカコーラ等--とは対照的に、メディアを通じ、或いは米国政府に頼って猛烈な対日批判を展開していた。そうしたメディア報道を背景に、当時は米国をはじめ諸外国の人々から"変な"質問を数多く受けたものだ。

 良かれ悪しかれ、メディア報道、特に映像・音声が持つ絶大な影響力を行使するテレビ報道は、我々の思想・行動を大きく左右する(例えば、"TV Remains the Largest Mass Medium," MIT Technology Review, Juneを参照)。しかしながら①発信された情報が正確かどうか、また②受信する人が正確に理解出来るかどうか、は全く別問題だ。これに関し、最近発表された或る大規模な国際共同研究が大変興味深い(Foreign News on Television, New York: Peter Lang, June 2013)。国際的に共通している主な特徴は次の3点--①海外ニュース、特に国際政治関連は、国内ニュースに比べて極めて限られ、しかも日本における海外ニュースの比率は極端に低い。②海外ニュースが注目されるのは(a)暴力や天災等の事件・事故、或いは(b)自国の人々が係わったニュースである。③海外ニュースの一件当たり放送時間は短く、米国で70秒、中国で26秒、ドイツで58秒、そして日本は123秒。元々関心が薄い海外情勢を、僅か約1~2分で出来るだけ多くの人々に"分かり易く"解説することが、"至難な業"であることは誰も否定しまい(海外のテレビ報道関係者が日本に対して抱く関心はアジア諸国を除き余り高くない。下表を参照)。こうしたなか、真偽は別として、"分かり易く"の名の下に、"解ったという気にさせる"話術に巧みなテレビ解説者が横行するのは、当然の帰結でもある。かくして、福島原発やアベノミックス等、日本に関連した外国でのテレビや新聞報道を眺めつつ、日本の対外イメージと自己イメージとのギャップを痛感している(Fukushimaに関する独仏メディアの厳しい批判は次の2を参照されたい)。


ヒアリング調査: 各国のテレビ・ニュース報道関係者が注目する諸外国の順位

調査対象国
↓ 注目する外国 米国 中国 香港 台湾 シンガポール ドイツ カナダ スイス
日本 13 2 3 2 5 14 13 11
米国 X 1 1 1 1 1 1 2
中国 4 X X 3 2 5 3 7
英国 2 3 2 5 7 3 2 6
ドイツ 7 7 9 7 12 X 15 1
フランス 11 5 7 6 11 2 10 3
アフガニスタン 1 15 18 n.a. 24 7 4 14
イラク 3 9 12 17 17 9 6 16
ロシア 12 4 8 11 13 4 14 8

注: 上述した専門書に掲載されている表を、日本を中心に行及び列の順序を並び替え、主要国に限定して表示。


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