メディア掲載 グローバルエコノミー 2013.06.07
TPP参加国は、十月のAPEC首脳会議の際に開かれるTPP首脳会議で大筋の合意を行いたいという意向だ。JA農協のTPP反対運動等により交渉参加が遅れに遅れた日本が、実質交渉に参加できるのは、七月の一部と九月の会議しかない。
過去の貿易自由化交渉と同じく、今回も農業が大きな障害となっている。自民党TPP対策委員会がコメ、麦、牛肉・豚肉、乳製品、甘味資源作物(砂糖、デンプン)の農産物五品目を関税撤廃の例外とし、これが確保できない場合は、脱退も辞さないと決議したほか、衆参両院の農林水産委員会も同様の決議を行っている。
■参院選後に決断か
このような例外扱いは可能だろうか。アメリカも砂糖や乳製品について関税撤廃の例外の意向を持っているが、砂糖はオーストラリア、乳製品はニュージーランドに対してだけである。それ以外の国には、関税を撤廃する。日本のように、たくさんの品目について、かつ、全てのTPP参加国に対して例外扱いを要求しているのではない。しかも、このようなアメリカの要求でさえ、オーストラリア、ニュージーランドは強く反対している。
また、アメリカは、コメ、麦、牛肉、豚肉、乳製品、オーストラリアは、麦、牛肉、砂糖、乳製品、ニュージーランドは乳製品、ベトナムはコメ、について、輸出を増やしたいと考えている。これらは、自民党や国会の委員会が例外要求する農産物五品目と重なる。理念的にも、自由化の割合が多い、自由貿易協定を目指すというTPP参加国にとって、日本の例外要求を認めることは、困難である。
国内政治と国際交渉の間に挟まれた安倍総理は、この事態をどのようにして切り抜けようとするのだろうか? おそらく参議院選までは農産物五品目は関税撤廃の例外とするよう交渉すると国内に説明し、参議院選後の交渉最終局面で決断することになるだろう。・・・