コラム  国際交流  2013.05.08

安定を持続する中国マクロ経済と日本企業のビジネス展開<北京・上海・成都出張報告(2013年4月15日~26日)>

◇ 第1四半期の実質成長率(前年同期比)は+7.7%と前期(7.9%)を若干下回った。今回の成長率が事前の予想(8.0%程度)を下回ったのは消費の下振れが原因である。しかし、景気の緩やかな回復基調は依然変わっていないとの見方が大勢である。

◇ 雇用情勢は、経済のサービス化を背景に引き続き堅調に推移すると予想されている。物価、不動産価格も望ましい範囲内で安定的に推移していることから、足許のマクロ経済情勢は非常に良好な状態が続いていると評価されている。

◇ 今回、予想外に成長率を押し下げた消費の下振れの最大の原因は、昨年12月4日に習近平が発表した「中央8条規定」による綱紀粛正の影響である。1月下旬以降、これがますます厳格に実施されるようになり、高級レストランでの飲食、高級酒、高級生花等の販売が大幅に減少するなど、消費全体に大きな影響を及ぼしている。

◇ 1~3月の日本の対中直接投資額は前年比+12%と、尖閣問題の影響で日中関係が最悪の状況であるにもかかわらず、引き続き堅調な伸びを示している。ただし、主要企業の対中投資スタンスが慎重化しているのは事実であり、以前から予定していた投資の実施時期について逡巡している企業が多い。もし現在の厳しい政治的な逆風がなければ、日本企業の対中投資は大変な勢いとなっているはずである。

◇ 現時点において尖閣問題の最も深刻な影響は中国人消費者や中国企業による反日意識に基づく不買運動ではなくなってきている。もちろん欧米・韓国企業に比べて日本企業が依然若干のハンデを背負っているのは事実である。しかし、むしろそれ以上に日本企業自身、とくに社長、ボードメンバー等本社経営陣の中国ビジネスに対する取り組み姿勢が必要以上に慎重になっているため、中国での販路拡大や製品開発に対して十分な経営資源が投入されず、それが日本企業の中国現地部門の積極的な事業展開の制約となっていると指摘されている。

◇ 中国の地方政府の日本企業に対する積極姿勢を十分理解している中国現地責任者等は、中国市場の開拓はむしろこれからが本番であると考えており、尖閣問題発生以前と変わらない従来通りの積極的な対中投資方針を維持したいと考えている。一方、日本の本社は慎重姿勢を崩していないため、前回出張の1月時点に比べて、最近は本社と中国現地の間のギャップが拡大しつつあるように感じられた。

◇ 最近、理財商品の販売を通じて、規制金利体系の枠を超えた高利回り商品が提供されていることは、事実上金利の自由化がスタートしつつあると受け止められている。


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安定を持続する中国マクロ経済と日本企業のビジネス展開<北京・上海・成都出張報告(2013年4月15日~26日)>