論文  財政・社会保障制度  2013.04.05

3段階で財政を健全化―北海道赤平市の財政再建への取り組み―

『地方財務』(株式会社ぎょうせい)2013年3月号に掲載

はじめに


 本稿では、2007(平成19)年度の「地方公共団体の財政の健全化に関する法律(以下、「財政健全化法」という)」の成立の頃に、「全国ワースト2位」や「第二の夕張市」と報道された北海道赤平市の財政再建の取り組みに着目する。赤平市は財政再生団体や早期健全化団体の移行基準に抵触した市町村のひとつだったが、2009(平成21)年度には、財政再生団体にも早期健全化団体にも該当しないという状況までに改善し 、現在に至っている。

 なぜ短期間で回避できたのだろうか。早期に改善した赤平市について書かれた論文や記事はほとんど存在しない。

 赤平市の財政再建は3段階に行われていた。赤平市の財政再建の端緒は、2005(平成17)年度に発表した市民参加型の財政再建計画『あかびらスクラムプラン(以下、「スクラムプラン」という)』である。しかし、開始した直後の2006(平成18)年度に「空知産炭地域総合発展基金」問題に直面し、借入金を一括で償還しなければならず、その結果、一般会計決算で赤字が生じたため、すぐさま計画を練り直し、『赤平市財政健全化計画(以下、「健全化計画」という)』を発表した。だが、2007(平成19)年度の財政健全化法の成立をきっかけに、連結実質赤字比率の数値が基準を大幅に上回っていることがわかった。このままでは、財政再生団体に転落しかねないため、再度計画を練り直し、『赤平市財政健全化計画(改訂版)(以下、「改訂版」という)』を発表した。このような窮状に追い込まれたが、その間、公立病院特例債の発行や特別交付税の増額、積雪量が例年より少なかったことによる除雪費用の減少などの、さまざまな機会にも恵まれた。これらの機会も後押しとなり、財政再建がうまく進んだ。

 このように赤平市の財政再建は、幸運と不運の連続によって実現されたものだが、着目すべき点は、状況に合わせて迅速かつ臨機応変に対応したことと、さまざまな機会を確実にとらえたことである。本稿は赤平市の財政再建を詳細に検討することを目的とし、内容は以下のとおりとする。第1章では、最初の財政再建計画であり、改善のベースとなったスクラムプラン策定に至る経緯を概観する。第2章では、健全化計画とその改訂版に至る経緯を概観する。第3章では、3つの財政再建計画の内容を把握し、第4章で改善の経過と成果を検討する。第5章で病院改革に焦点をあてる。...


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3段階で財政を健全化