論文  グローバルエコノミー  2013.03.26

デフレ脱却の条件

 我が国では1990年代後半以降、緩やかなデフレーションが続いている。現政権はデフレ脱却を最優先課題のひとつと位置づけ、政府と日銀が一体となった取り組みが行われている。現政権でのデフレ脱却に向けた取り組みはこれまでのところ総需要の喚起策が中心となっている。しかし、ミクロの商品の価格が需要と供給で決まるのと同様に、マクロの物価も総需要と総供給で決まる。したがってデフレ脱却には、総需要だけでなく総供給に働きかけること、つまり、メーカーや流通業者の慎重な価格づけ行動を変えさせることが重要である。本稿の試算によれば、物価上昇率と産出量ギャップの過去の関係を前提とすると、日銀が物価目標として掲げている消費者物価上昇率2%を達成するには約50兆円の需要増が必要である。この結果は、力ずくの需要喚起だけで物価目標を達成するのが困難であることを示している。メーカーや流通業者がライバル企業の行動を過度に気にすることなく、需要増に見合った価格引き上げを行える環境を整備する必要がある。


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