コラム 国際交流 2013.02.01
昨年11月末、中国海軍(PLAN)の空母「遼寧/辽宁」上で、艦上戦闘機「殲/歼-15」が発着艦する映像が世界中に流れた。この映像が中国国民に与えた心理的効果の大きさは周知の通りだ。が、航空自衛隊(JASDF)の戦闘機パイロットで元空将の永岩俊道氏から映像の中のgear strut length(脚のストラット長)やexternal launchers(外装物)、そしてarresting wires(着艦拘束装置)の状態を伺い、「危機感を過度に抱く必要はないが、冷静な警戒心を抱き、常に注視しておく事」の重要性を悟った次第だ。いずれにせよ、筆者を含む素人判断の危険性と共に世界中に蔓延する素人判断の影響力を痛感している(これに関連し、太平洋戦争中は軍機に属したため日本の一般国民が全く知らず、また空母の活躍で戦術的価値が大きく低下したものの、戦後になって多大かつ持続的な心理的効果を持つ帝国海軍の戦艦「大和」の存在を想い浮かべている)。
さて毎年1月と言えば世界経済フォーラム(WEF)と米国経済学会(AEA)の年次総会に関する情報が興味深い(次の2を参照)。前者ではハーバード大学のドリュー・ギルピン・ファウスト総長やジョセフ・ナイ教授、そしてクレイトン・クリステンセン教授、後者ではケネス・ロゴフ教授やマーティン・フェルドシュタイン教授のコメントに知的関心を抱いている。また昨年年末に読んだForeign Affairs誌新年号に関しては、多くの友人とメールや電話を通じ、またワイン・グラス片手に語り合った。特にMITの黄亜生教授の論文("Democratize or Die: Why China's Communists Face Reform or Revolution")には、中国官僚の昇進制度に関して米国の友人が書いた論文が引用されており、楽しい気持ちで読了した(Victor Shih et al., "Getting Ahead in the Communist Party: Explaining the Advancement of the Central Committee Members in China," American Political Science Review, Vol. 106, No. 1 (February 2012))。またジョージ・ワシントン大学(GWU)のヘンリー・ナウ教授が昨年10月に発表した本(Worldviews of Aspiring Powers: Domestic Foreign Policy Debates in China, India, Iran, Japan, and Russia (次の2も参照))も書評の中で触れられており、嬉しく思っている。
残念に思ったのは、故サミュエル・ハンチントン教授の門下生で、今はダヴォスやテレビ(CNN)で活躍中のファリード・ザカリア氏の論文だ("Can America Be Fixed?")。インド出身の同氏はエズラ・ヴォーゲル教授の言葉を引用し、また"Turning Japanese"と題して、論文の最後を"If the Americans and the Europeans fail to get their acts together, their future will be easy to see. All they have to do is look at Japan."という文で締めくくっている。ダヴォスで雄弁を振るわれた政策研究大学院大学(GRIPS)の黒川清先生から色々なお話を伺い、たとえ非力であっても"今こそ若き世代そして将来の世代のために奮起しなくては!! "と猛省している。