メディア掲載 財政・社会保障制度 2012.12.14
医療の世界では近年、世界的に医療技術評価への関心が高まっている。医療技術評価とは、医療技術の開発や普及および使用で生じる医学的、経済的、社会的、かつ倫理的な意義を分析する学際的な政策研究分野である。
医療を巡り多くの国で、技術の高度化やIT(情報技術)化、少子高齢化による需給構造の変化が起きている。先進国では、高額な薬や再生医療の登場で医療費が継続的に増大し、政府は医療供給の持続可能性について検証する必要に迫られている。特に経済評価への関心が高まっている。
1990年代初頭、世界で初めてこの問題に取り組んでのはカナダとオーストラリアだった。99年には英国国立の医療技術評価機構(NICE)が設立され、世界の医療技術評価のけん引役となった。NICEは費用対効果の検証を柱の一つに据えたため、欧米の医療政策では費用対効果の観点が極めて重要な意義を持つようになった。これに対して、医薬品メーカーは「医療技術評価は行政による新たな障壁の設定だ」と反発した。・・・