メディア掲載  国際交流  2012.11.16

中国経済の構造変化と今後の日中経済関係

太陽ASGエグゼクティブ・ニュース(2012年11月第117号)に掲載

1. 尖閣諸島国有化と日中経済関係

(1) 尖閣諸島国有化後の日中関係悪化
 本年(2012年)9月9日、ウラジオストックで開催されたAPEC総会において立ち話の形とはいえ、野田総理と胡錦濤中国国家主席との会談が成立した。その翌日の9月10日、日本政府は尖閣諸島国有化を閣議決定した。外交的に譲歩して野田総理との会談に応じた胡錦濤国家主席はメンツをつぶされた形となり、中国側は日本政府の決定に対して非常に強く反発。反日デモ・暴動が125以上の都市で発生し、日中関係は1972年の国交正常化以後の40年間で最悪の状態に陥った。日本企業の工場や店舗が破壊、焼き討ち、強奪の標的にされ、多大の損害を被った。それに加え、日本製品に対する不買運動が中国全土に拡大し、多くの工場が生産の一時休止に追い込まれた。
 こうした状況を踏まえ、現在(10月半ば)多くの日本企業が今後の中国ビジネスの進め方について再検討を行っている。現時点では、反日感情が高まっている状態がいつ頃沈静化するのかがわからないため、各社とも中国市場の動向を注意深く見守っている。11月8日から始まる中国共産党第18回全国代表大会(以下、党大会)において次期最高指導部人事が確定した後、徐々に状況が変化していくと予想されるが、それがいつのタイミングなのかはわからない。現在の状況下で日本に対して融和的な姿勢を見せれば、中国国内で厳しい批判に晒される可能性が高いことから、対日外交姿勢の変更は政治的なリスクが大きい。このため、政治的にはしばらく膠着状態が続く可能性が高いと見るべきであろう。日中関係が改善に向かうとすれば、日本側の政権交代後になるとの見方があるが、その可能性も否定できないように思われる。

(2) 再度「政冷経熱」の時代か
 ただし、経済関係は政治情勢とは切り離して徐々に改善に向かう可能性があると考えられる。以前も2001~05年の小泉政権時代に、小泉総理の靖国神社参拝が中国側の強い反発を招き、日中関係は長期にわたって冷え込んだ。しかし、その間、日本企業は対中投資を積極的に増やし続け、「政冷経熱」と呼ばれる状況となった。今回もこれに近い状況になるのではないかと予想される。確かに政治面の日中関係は過去40年で最悪の状況にある。しかし、経済関係は過去40年で最も緊密化している。これは日中双方がお互いを必要とし合っているからである。日本企業は急速に拡大し続ける巨大な中国市場を求め、中国は安心・安全・ハイテクの代名詞となっている日本企業の高い技術とサービスを求めている。日中双方が互いを必要とする度合いは小泉政権時代をはるかに上回っている。この日中経済関係の現状を考えると、政治面での日中関係の悪化が経済関係に一定のマイナス効果を及ぼすことは避けられないが、それでもなお日中経済関係緊密化の傾向が今後も続く可能性が高いように思われる。
 以下では、そうした両国経済緊密化の主因である中国経済の構造変化について整理し、今後の中国ビジネス展開について考えてみたい。

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