コラム  国際交流  2012.10.09

尖閣諸島国有化を巡る日中関係悪化の背景と米国の見方<米国出張報告(2012年9月17日~27日)>

◇ 米国政府、有識者等は日中両国が双方の努力により今回の事態を早く沈静化させることを望んでいる。米国は尖閣諸島を日米安保条約第5条の対象と考えるが、領有権についての立場は中立である。領有権問題については日中双方の話し合いの中でうまく解決することを期待しており、米国が日中間の領土問題に関する細かな議論にまで巻き込まれることは避けたいと考えている。

◇ 中国に対して米国は一方的に日本寄りではないことを示す一方、中国が軍事的行動に出れば米国が黙っていないという姿勢も示すことにより冷静に対処することを促している。

◇ 尖閣諸島の領有権問題に対して米国の国際政治の専門家の多くは以下のような冷めた見方をしている。領土問題を根本的に解決するにはもう一度戦争をするしかない。しかし、日中両国がそれによって失う国益の大きさを考慮すれば、大した経済的価値もない小さな無人島を巡って戦争を仕掛けるというのはありえない選択肢である。そうであるとすれば、問題棚上げによって現状維持を保つことが賢明である。

◇ 外交政策は常に国際情勢に適応してプラグマティックに運営されるものである。アジア太平洋地域の重要性の増大は経済、安全保障の両面において明らかである。したがって、大統領選挙後の政権が民主党政権でも共和党政権でも、外交戦略上のアジア太平洋地域のウェイトを高めなければならないという基本方針は変わらない。

◇ 最近、ワシントンDCでは日本への関心が高まっている。これには米国の外交政策がアジア重視の方向に舵を切ったことが影響していると見られている。以前、米国で日本研究が盛んだった1990年代までは、日本自体の政治・経済等に対する関心が高かった。しかし、今回の日本研究の関心の中核部分は日本自体の研究ではなく、中国、韓国、アセアン等アジア諸国と日本との関係にある点が新たな特徴である。

 

 

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尖閣諸島国有化を巡る日中関係悪化の背景と米国の見方<米国出張報告(2012年9月17日~27日)>