コラム  財政・社会保障制度  2012.08.29

医療介護費のGDP比がOECD諸国の平均水準まで上昇

 8月24日、厚生労働省が2011年度の概算医療費が37.8兆円となったことを発表した。概算医療費は国民医療費より1年早く公表される速報値と位置付けられるデータである。患者が全額自己負担する医療や労災医療などの費用が含まれていない分だけ国民医療費より小さい。2009年度データでみると、概算医療費35.3兆円に対し国民医療費は2.15%大きい36.0兆円であった。したがって、2011年度の国民医療費は38.6兆円と試算できる。
 一方、介護保険事業状況報告の月次データによれば、2011年度の介護費は8.4兆円と推計される。つまり、2011年度の国民医療費と介護費の合計は47.0兆円になる。また、同年度のGDPは469.9兆円(名目ベース)であった。その結果、2011年度の医療介護費がGDPに占める割合は丁度10%になった模様である。2009年度の同割合は9.11%であり、OECD諸国の中で最も低い位置にあった。それが、高齢化の進展とデフレ経済の下、医療介護費の増加率が名目GDP成長率を上回り続けている結果、同割合が毎年0.4%~0.5%ジャンプしているのである。
 さらに、政府が本年3月に発表した社会保障給付将来推計データに基づき試算すると、2012年度の医療介護費がGDPに占める割合は10.43%と予想される。これは、わが国の同割合が英国やスウェーデンを一気に追い抜きOECD諸国の平均水準に既に達していること、4~5年後には米国に次ぐ第2位になる可能性があることを示唆している。したがって、今後は医療介護の報酬単価引き下げ圧力が高まり、病院や介護施設の経営環境が厳しくなることが予想される。
 表1は、この医療介護費がGDPに占める割合を2009年度実績で都道府県別にみたものである。東京都の4.95%から高知県の15.97%まで著しい差がある。2009年度における同割合の全国平均である9.11%を大きく上回る都道府県には、医療介護以外の産業の成長が滞っている、医療介護のニーズと提供体制の間でミスマッチが起き全体として医療介護過剰消費の状況にある、という二つの構造的問題がある。このうち医療介護過剰消費を解消するためには、他のOECD諸国が医療制度の異なる中で共通して実現しているように、財源確保と提供体制を広域医療介護圏単位で一元的にガバナンスする仕組みを至急構築する必要がある。


120829_matsuyama.jpg