コラム  国際交流  2012.07.12

「東京=ケンブリッジ・ガゼット:グローバル戦略編」第39号(2012年7月)

小誌は大量の資料を網羅的かつ詳細に報告するものではない。ハーバードにいる一研究者である筆者が接した情報や文献を①マクロ経済、②資源・エネルギー、環境、③外交・安全保障の分野に関し整理したものである。紙面や時間の制約に加えて筆者の限られた能力という問題は有るが、小誌が少しでも役立つことを心から願っている。

 輸出関連企業とユーロ建ての資産家の方々には申し訳ないが、筆者は円高を利用し、ワイン愛飲家(oenophile)・愛書家(bibliophile)である幸運を最大限に満喫している。さて、多くの専門家が指摘している通り、欧州が危機を克服するかどうか、極めて難しい問題である。が、日本も為替に加え財政金融面でも、"対岸の火事"として傍観出来る立場にはない。こうしたなか欧州の友人達に精神的応援の気持ちを込めてメールを送った―哲人エピクロスは語る、「愚者の幸運より賢者の不運の方が望ましい。なぜなら、優れた判断に基づいて行動したにもかかわらず不運にも失敗することは、杜撰な思考に基づき行動したにもかかわらず単なる幸運で成功することより好ましいからだ(κρεῖττον εἶναι νομίζων εὐλογίστως ἀτυχεῖν ἢ ἀλογίστως εὐτυχεῖν· βέλτιον γὰρ ἐν ταῖς πράξεσι τὸ καλῶς κριθὲν ‹μὴ ὀρθωθῆναι ἢ τὸ μὴ καλῶς κριθὲν› ὀρθωθῆναι διὰ ταύτην; メールでは勿論英語で、"The misfortune of the wise is better than the prosperity of the fool, for it would be better that well-planned actions should perchance fail than ill-planned actions should perchance succeed.")」と。

翻って欧州も、アジアの出来事を"対岸の火事"と観る立場にはないはずだ(次の2の外交・安全保障の部分を参照)。欧州の或る友人は、「極東に対し関心を持ち続けている。が、昔日本、今中国」と前置きして、ノーベル文学賞受賞の理由となったヘルマン・ヘッセの『ガラス玉遊戯(Das Glasperlenspiel)』(1943)を引用しつつ、諧謔的なメールを送ってきた--「危険な時代が近づいている。至る所にその前兆が感じられる。世界は再びその重心を移そうとしている。権力の移動が起ころうとしている。しかもそれは戦争や暴力を伴わずには実現されないであろう。

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「東京=ケンブリッジ・ガゼット:グローバル戦略編」第39号(2012年7月)