コラム 国際交流 2012.06.13
◇ 2月から5月にかけて米中関係に関わる複数の事件が発生し、両国政府が政治的に難しい状況に置かれていた。その中で、5月初旬に予定通り米中戦略経済対話(SED)を開催し、重要閣僚間の定期的な対話を継続した意義は大きいと評価されている。
◇ それに加えて、SED終了直後には中国の梁光烈国防部長が訪米した。軍―軍同士の対話については、両国の軍内部に反発があったが、双方の文民(米国国務省と中国外交部)が主導する形で軍―軍対話を継続させた意義は大きく、この点から見ても足許の米中外交関係は成熟してきているとの見方で一致している。
◇ 対話継続の意義は大きいが、米中関係の底流にある相互不信の払拭はできておらず、実質的な成果は大きくないとの評価も専門家の間で一致している。両国とも政権交代を控えている状況下、対話の継続を優先し、経済面、安全保障面で深刻な対立が生じることを避けるために本格的な交渉は先送りしている。
◇ 足許の中国経済に対する米国の有識者の見方は弱気派と強気派に分かれている。米国国内では日本同様、弱気派が多い。中長期的に最も悲観的な見方としては2~3年以内に5%以下の成長率にまで低下し、経済は失速するとの見方がある一方、2020年頃までは高度成長が続くとの見方もある。
◇ 中国、米国、日本、欧州を見渡すと、一つの共通課題に直面している。それは国家が直面する重要課題を解決するリーダーの不在という問題である。
◇ 米国は現在、大統領選挙モードに入っており、大統領選の最大の関心事は国内経済問題、とりわけ雇用確保問題である。したがって、国内における雇用創出にプラス効果がない政策が検討の俎上に上がることはない。
◇ こうした政治状況の中で、もしTPPの実施が国内雇用創出にとって明確なメリットを生むことができない場合、TPP参加交渉の進展は不可能である。大統領選挙が終わるまでTPP交渉が動くことは考えにくく、年内締結は困難と見られている。
◇ 4月27日、日米両国政府は「2+2」の合意内容を共同発表した。これにより日米両国は今後の日米同盟の進化のあり方について検討を重ねていく準備が整ったと見ることが可能である。そこで日本として考えなければならないことは、アジア地域の安定確保のための安全保障上のアーキテクチャー構築、その軸となる日米同盟のあり方等について日本がより主体的に貢献するためには何をなすべきかという点である。
◇ 米国は日米同盟を軸としてそこに他の1国を加えた3国間の協力関係を拡大していくことにより、2国間の線のスキームからwheel & web型の多国間スキームへの展開を目指している。中でも日中韓3国の協力関係が重要であると考えられている。