コラム  国際交流  2012.03.15

最近の日米中関係について<米国出張報告(2012年2月21日~3月3日)>

◇ 今回の習近平副主席の訪米は、米中両国とも今後の関係改善に向けての地ならしとして儀礼的な訪問という性格が強いものと位置づけていた。その意味では双方とも事前の期待レベルが高くなかったことが幸いし、所期の目的はかなりの程度達成できたと評価できる訪問となった。

◇ 米国は昨年来、米中両国の防衛関係者幹部同士の直接対話による相互理解の促進を重視してきており、今回の習金平副主席の国防総省訪問もそうした意図に基づいて、米国側が主体的にアレンジしたものである。

◇ 米国のアジア重視外交への方向転換の背景には以下のような最近のアジア情勢の変化が影響していると見られている。①中国の経済面での台頭と外交・安全保障面での対外強硬姿勢の顕著化、②アジア地域の経済的な重要性の増大、③中国と周辺アジア諸国との摩擦が2010年に集中的に発生、④アジア諸国が米国のサポートを期待。

◇ 普天間基地の海兵隊の一部グアム移転が検討の遡上に上がっている。これは普天間から辺野古への移転の目処が立たない状況下で、それにこだわり続けると米軍のアジア再編計画が進まなくなることから、動かせる部分だけ先に動かしたものである。

◇ 菅政権、野田政権の日米同盟へのコミットメントにより、鳩山政権時代に生まれた日米同盟への懸念が消え去ったため、米国が普天間移設問題等を再度見直すことができるようになったというのが専門家の一致した見方である。

◇ ペンタゴン外部の専門家からは、沖縄県民感情を考慮すれば、辺野古移転はそもそも実現可能なアイデアではない上、米国の防衛戦略上も必ずしもそこに固執する必要はないのではないかとの見方を少なからず耳にした。今後、日米間で両国の様々な国内要因への配慮と防衛戦略上の必要性の両方を重視する視点に立って普天間基地の移転先を見直すことは可能と見られている。

◇ 米軍はこれまで日本に対して比較的柔軟な姿勢で応じてきたが、日本はそれを評価せず、基地再編問題が全く動かないことにしびれを切らしつつある。本件の抜本的な解決に日本政府が早期に着手しないと、日米関係が再び悪化することが懸念される。

◇ 日米間のフランクな対話には、従来の外務省、防衛省ルートに加えて、政治家同士の複数の緊密なコミュニケーションルートを構築する必要がある。

◇ 米国では一般庶民のTPPに対する関心は極めて低く、その言葉を聞いたことすらない人々が大多数を占めている。TPPと日中韓FTAは別々に交渉が進められているが、相互に交渉を促進し合う効果が期待できる。


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最近の日米中関係について<米国出張報告(2012年2月21日~3月3日)>