レポート 外交・安全保障 2012.01.09
(以下、報告書からの抜粋)
4、評価
今回の政策シミュレーションでは、東シナ海、就中尖閣諸島付近で起こり得る緊急事態の際、日本政府に極めて慎重な政策決定が求められる一方、民意を反映しないような外交的妥協は短期的に機能しても、中長期的には逆効果となる可能性が高いことが改めて認識された。
特に、重要な教訓として以下の2点が挙げられる。
① 尖閣問題に限らず、東シナ海、南シナ海に浮かぶ島嶼、岩礁などの領有権をめぐっては様々な物理的衝突が起き、多くの場合、漁船・船舶の拿捕や乗組員の拘束が発生している。この種の問題には大別して二つの解決パターンが見られる。
前者は、問題発生の初期段階で、拘束された相手国国民を司法手続に乗せる前に、行政行為である「国外退去処分」とし、問題そのものを政治的に解決するものだ。これに対し、後者は、法令違反を犯した相手国の漁船、国民を国内法に基づき拿捕・逮捕し、通常の司法手続の中で責任を問うものである。・・・・・・・・・・・
② 日本・某国関係と日米関係との関連は極めて微妙である。日某関係が険悪化することは米国の望むところではない。同時に、日某関係が緊密過ぎる事態となれば、逆に米側に疑心暗鬼を生み、日本を外す形での米某直接接触・取引が進むことも考えられる。
今回の政策シミュレーションでも、日本政府の政策がある時期から急速に某国寄りとなったため、米政府内で日本に対する不信感が生まれた。某国との関係だけを重視すればかかる政策も選択肢の一つだろうが、現在の日本の世論を考えれば一定以上の対某国譲歩は長期的国益を害する可能性がある。