コラム 国際交流 2011.12.28
◇ 内陸部の主要3都市では、いずれもマンション建設ラッシュが続いており、どこへ行ってもクレーンが立ち並ぶマンション建設現場が目につくことが多かった。中国の旺盛な不動産実需は衰えていないため、当分バブル崩壊が生じるとは考えられない。
◇ 内陸部の経済成長とともに拡大する国内市場での販路拡大を目指し、内陸部主要各市において日本企業の進出・増産の拡大が目立っている。それでも、内陸部現地の邦銀支店長や地方政府幹部から見ると、拠点展開や製品開発に関する日本企業の取組み姿勢は依然理解できないほど慎重過ぎると評価されている。
◇ ここ数年、大手邦銀の取引先が中国での合弁相手に騙されたという話は聞かれなくなっているほか、中国から日本への配当金送金についても全く心配の必要がなくなっているが、多くの日本企業はいまだにそうした事実すら認識していない。今後の中国ビジネスの順調な展開に伴い、誤った認識や過度に慎重な姿勢が修正されれば、日本企業の内陸部への進出はさらに加速する可能性が高いと考えられる。
◇ 重慶、成都、武漢いずれにおいても、交通・運輸インフラの建設が引続き急ピッチに進んでおり、周辺地域との経済連携、経済誘発効果の拡大が一層促進される。
◇ 重慶・武漢・成都のワーカーの賃金水準は、沿海部に比べ10%程度の差しかなくなっている。物流が発達し、役所の事務処理効率も高い沿海部に比べると、内陸部の方がむしろコストは高くつくケースも多い。このため今後内陸部に進出する企業の目的はもはや低賃金を利用したコストダウンではなく、労働力確保が主となっている。
◇ 多くの企業の日本の本社ではブランドを傷つけるリスクのある本社以外での製品開発に対して否定的である。このため、中国現地で中国人消費者ニーズにマッチした製品を開発すればはるかに大きな収益の確保が可能となるにもかかわらず、目の前のチャンスをみすみす喪失せざるを得ない状況が続いている。
◇ 現地拠点のトップやNO.2など経営幹部に任命された優秀な中国人の能力をフルに発揮させるには、過去の日本人幹部のバイアスのかかった人事考課を即座に修正し、より実務重視型、能力主義の組織体制に改めることが望ましい。しかし、そうした人事考課の修正を行おうとしても、継続性を重視する日本の本社サイドの人事部門がこれを認めないケースが多い。このためせっかく優秀な中国人社員が現地拠点経営幹部に任命されていながら、十分な実力を発揮できないという結果を招いている。
中国内陸部の経済情勢、および深圳・香港の相互依存型発展~インフラ建設の経済効果、労働市場の変化の観点からの地域間比較~<重慶・成都・武漢・深圳・香港出張報告(2011年12月5日~14日)>