メディア掲載 財政・社会保障制度 2011.12.06
11月22日の提言型政策仕分けで、医療の公定価格である診療報酬の薬剤費部分を除いた本体部分の改定率をプラスではなく「据え置き」または「抑制」にすることが強く要求された。これに対して、民主党の医療・介護ワーキングチームは、「ネットでプラス改定にすべき」と主張している。そこで、いずれの主張が正しいのか検証するために、社会医療法人の2009年度と2010年度の業績データを情報公開制度に基づき収集した。
社会医療法人とは、医療法改正により2007年度から創設された法人類型である。全国の社会医療法人の業績を集計すれば、「診療報酬が全体としてプラス改定が必要なほど低いのか否か」を判定できる。社会医療法人は、一般的に不採算と言われることが多い僻地医療、救急医療、小児周産期医療などの政策医療も補助金なしで行い、診療報酬が給付対象とする医療サービス全体を提供しているからである。
厚生労働省によれば現在社会医療法人数は152である。そのうち本稿執筆時点で132法人の業績データを集めることができた。図表1と図表2がその結果である。
まず注目されるのは、診療報酬が底と言われた2009年度でも社会医療法人全体の経常利益率が3.5%と良好だった点である。これは、小泉政権が実施した診療報酬抑制策が医療崩壊の原因ではないことを示唆している。
医療崩壊の真の原因は、公立病院が地域の医療ニーズとはミスマッチな過大な病院を税金で作り続けていること、加えて公立病院では医師以外の職員給与が民間より2~3割高く医師給与財源を奪っていること、単独施設経営の民間病院では医療技術進歩による患者の入院から外来・在宅へのシフトに柔軟についていけないこと、等にあるのである。
社会医療法人の業績が良好なのは、その多くが様々な機能を分担しあう施設群の複合経営体であり、地域医療ニーズとのミスマッチ解消に常に努力しているからである。その結果、プラス改定が行われた2010年度は、6.4%の増収、72.9%の増益、経常利益率5.7%と上場企業も羨む好調ぶりである。132法人のうち経常利益が赤字だったのは6法人にすぎず、逆に10%超が19法人もある。この事実を見れば、診療報酬引き上げが必要ないことは明らかであろう。