コラム  国際交流  2011.11.11

順調な拡大を維持する中国経済と日本企業の中国ビジネス展開<北京・上海出張報告(2011年10月24日~11月2日)>

◇ 足許のマクロ経済情勢に対する中国政府関係者および有力民間エコノミストの評価は、「短期的には問題ない」との見方が大勢である。物価動向についても「足許のインフレ圧力はあまり心配していない」との見方で一致している。

◇ 欧州金融不安の影響については、仮に第2のリーマンショックのような事態が起きたとしても、適切な景気刺激策を実施すれば、リーマンショック後と同様に急回復を辿り、最悪の場合でも通年では8%を割ることは考えられないとの見方が多い。

◇ 実質成長率の先行き見通しは、本年第4四半期が8.8~9.2%、来年は通年で8.5~9.0%と引き続き高度成長を持続すると予想されている。

◇ マクロ経済政策の基本方針については、当面は現状維持とし、年明け後、成長率と物価の推移を眺め、必要に応じて緩和方向に調整するとの見方でほぼ一致している。

◇ 政府のマクロ政策担当責任者、著名な経済学者等は、中長期的視点から見ると中国の経済社会には様々な問題点が存在し、これらが中国経済の内在的活力を低下させることを強く懸念している。この問題は「ミドル・インカム・トラップ(中所得国の罠)」と呼ばれる。

◇ 中国市場での日本企業の動向を見ると、東日本大震災後のサプライチェーン問題が解決した自動車関連がシェア回復に向けて急速に販売を伸ばしている。小売・飲食業については、日本の製品・サービスが日本国内と同じ価格で普通に売れる市場が拡大していることを背景に、販売網の急速な拡大、新規中国進出企業増大等の勢いが止まらない。

◇ 三菱東京UFJフィナンシャルグループの永易社長が早ければ3年後に利益が2.5倍に達する趣旨の発言をしたことが報道された。とくに発言には慎重な大手銀行のトップが発表した力強い見通しは各方面から高い注目を集めている。

◇ 邦銀の中国現地法人では、今後数年以内に日本人よりかなり速いスピードで昇進・昇給する中国人管理職層が目立つようになる可能性が高い。そうなれば日本人駐在員の中には処遇の逆転に不満を持つようになる職員が出てくることは避けられない。そうした職員に対しては、邦銀本体を退職し現地法人に転籍することにより中国人並みに昇進と昇給のチャンスを与えるといった選択肢を認めることが一つの対策として考えられる。

◇ 日本企業がますますグローバル展開を強化していく上で、若くても優秀な人材は、国内外を問わず適所に配置し、本人の能力に見合った活躍の場を与えることが重要である。以前に比べれば年功序列から能力主義へと移行したとは言え、とくに大企業においては能力と処遇のミスマッチの問題が根深く残っているのが実情である。


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順調な拡大を維持する中国経済と日本企業の中国ビジネス展開<北京・上海出張報告(2011年10月24日~11月2日)>