メディア掲載  財政・社会保障制度  2011.08.25

全国の社福の純資産、13兆円規模

 全国の社会福祉法人のうち、施設経営を行っている約1万6300法人の純資産を合計すると、13兆円近くに達することが、キヤノングローバル戦略研究所の松山幸弘研究主幹の試算で明らかになった。
 松山研究主幹は、東京都が公開する724の社会福祉法人の財務状況情報を「障害者施設」「高齢者施設」「保育所」など運営する施設によって分類。それぞれのカテゴリ-の平均値を算出した上で、その数値を基に東京都以外の法人の収支差額や純資産額の合計を推計した。病院経営を手掛ける法人については、全国の自治体などに情報公開制度に基づく開示請求を行い、財務情報を収集・分析した。
 その結果、施設経営を手掛ける社会福祉法人全体の純資産額は12兆8534億円と試算された。この数値について松山研究主幹は、「想像していた以上に巨額の推計値が出た。ただ、最大の問題は、純資産の巨大さより、これまで一度も社会福祉法人全体の経営状況を把握するデータが作成されることなく、補助金として多額の公費がつぎ込まれ続けてきたこと」と指摘している。

■社会貢献度、高齢者施設運営で低い傾向
 また松山研究主幹は、東京都が公開する社会福祉法人の財務状況を基に、各法人の社会への貢献度を推し量る「社会還元度指数」も算出した。毎年の支出を純資産で割った数値で、「この数値が高いほど、収益の社会還元に積極的と判断できる」(松山研究主幹)という。
 松山研究主幹は各法人の社会還元度指数を個別に算出した上で、運営する施設ごとに法人を分類。それぞれの指数の平均値を割り出した。
 その結果、保育所を運営する社会福祉法人では0.67、障害者施設を運営する社会福祉法人では0.69、病院を含む複数の事業を運営する社会福祉法人では0.93だった。その一方で、高齢者施設を運営する社会福祉法人では0.37にとどまった。高齢者施設を運営する社会福祉法人では、社会還元度指数が0.4未満の法人が約半分に達したという。
 松山研究主幹は、「高齢者施設を運営する社会福祉法人の中にも、指数が1以上の法人もあれば、他の施設を運営する法人の中にも、0.4未満の例もある。高齢者施設を運営する法人のすべてが社会貢献をしていないというわけではない。ただ、この値が低い法人については、利益を社会に還元するため、一層の努力が必要」と話している。


【2011年8月18日 株式会社キャリアブレイン 医療介護CB NEWSに掲載】