コラム 国際交流 2011.08.11
◇ 第2四半期の実質成長率9.5%は事前予想に比べてやや強めだった。本年下期の成長率も9.5%前後で推移し、通年では9.5~9.6%に達するとの見方が一般的。政府内のマクロ経済政策担当責任者やエコノミストは、成長率の現状について、早過ぎることも遅過ぎることもなく、政府のマクロ経済政策の期待通りの展開と評価している。
◇ 7月のCPI上昇率は6月をさらに上回るとの見方が多い。しかし、その後は豚肉、その他農産品の価格上昇率が鈍化し、本年後半から来年前半にかけてCPI上昇率が低下し続けるとの見方が大勢。ただし、CPI上昇率は低下する速度がやや遅くなっていると見られており、通年で5%を割ることは難しいとの見方が大勢である。
◇ 以上の景気・物価動向に対する現状評価・先行き見通しを背景に、マクロ経済政策運営の基本方針は12月の経済工作会議まで現状のまま変わらないとの見方が大勢である。ただし、下半期は物価動向を注視しながら、金利がこれまでの緩やかな上昇傾向から横ばいに転じるといった微妙な形での政策の調整が行われる可能性が高いと見られている。
◇ 日本企業の第4次対中投資ブームは順調な広がりを見せている。昨年後半以降は金額ベースでも増勢が明確化。前年比でみれば、10年上期-41.7%、同下期+53.1%、11年1~5月累計2.0倍と、期を逐って急速に伸びを高めて来ている。
◇ 自動車、エレクトロニクス等東日本大震災の影響を受けた企業も、落ち込んだ上期の業績分を下期に巻き返し、従来計画通りの年間計画の達成を狙っている。
◇ 最近の対中投資の目的の中心は中国における製造ではなく、中国国内市場における販売拡大であるため、対中投資が日本の産業空洞化につながる可能性は低下している。今後日本企業の中国ビジネスがさらに拡大を続ければ、中国経済が日本経済を押し上げる効果は一段と大きくなる。
◇ 中国ビジネスの収益拡大に伴い、中国部門の経営上の重要性が増大。多くの日本企業では現地駐在トップに就任する人物のランクを引き上げる傾向が見られている。
◇ これまでは中国人従業員の給与水準が現地駐在の日本人に比べて大幅に低いのが常識だった。現在もワーカークラスや大卒ホワイトカラーの初任給は日本人に比べて大幅に低い。しかし、日系企業の幹部職員については上位クラスから徐々に賃金の逆転現象が見られ始めている。今後数年以内に中国現地採用幹部職員の平均的な給与水準が日本人駐在員を上回るのは必至である。そうした状況下、日本人幹部職員の他社による引き抜きを防ぐためには、中国語の堪能な優秀な日本人幹部職員に対して給与面等での大幅な待遇改善を検討せざるを得なくなえることが予想される。
◇ 中国の高速鉄道の追突・脱線事故について、中国のテレビや新聞は連日、鉄道部に対する厳しい批判報道を続けた。その厳しさは過去に例を見ないものだった。