コラム 国際交流 2011.05.12
<主なポイント>
○ 第1四半期の実質GDP成長率前年比+9.7%について中国政府は、将来のインフレリスクはあるものの過熱状態には至っておらず、経済全体としては引き続き悪くない状況であると評価している。
○ 現在最も懸念される問題はインフレ圧力の高まりである。上期中は5%台が続く一方、下期は4%前後にまで低下し、通年では4%台で着地するとの見方が多い。ただし、下期も5%を割らない可能性など、上振れリスクを懸念する見方もある。
○ 物価の先行きについては、とくに大幅な賃金上昇が一般庶民のインフレ期待心理にどのような影響を与えるかが予測しがたい点が強く懸念されている。
○ 中国では東日本大震災直後から1週間もの間、新聞テレビが震災関連ニュースを大きく取り上げた。このため殆どの中国人が震災後の日本の状況をよく知っている。
○ 多くの中国人は、日本人が我慢強く精神的・肉体的な苦痛を堪え忍び、冷静に秩序を保っていた姿に日本人の人間性やモラルの高さを感じた。これまで日本人をよく知らなかった中国人は、日本人はこんな立派な国民だったのかと驚いた。
○ 震災直前まで、中国のインターネット上の日本関連の書き込みは8割が反日あるいは嫌日的内容だった。しかし、震災直後の日本人の姿を見て日本人に対する評価は一変し、9割が親日的あるいは日本を評価する内容に変わった。
○ 福島第一原発の事故発生とその後の政府および東京電力の対応の遅れ、不備等を見た後は、日本政府および東京電力に対する不満が急速に高まった。
○ 日系ハイテク製造業の中国駐在役員によれば、部品メーカーの被災によるサプライチェーンの断絶の影響は5月中旬頃に被害の全貌が明らかになると見られている。
○ 中国の地方政府では、被災地での操業再開が難しい日本企業の受け入れ体制の強化を図ろうとしている自治体が増えてきている。
○ 昨年来の第4次対中投資ブームについては震災の影響は見られておらず、引き続き日本から中国への直接投資は高い伸びが続いている。
○ 従来上海市内で日本の商品を専門に扱うところは高額所得層向けの高級デパートに限られていた。ところが昨秋、普通の若者たち向けのショッピングセンターでも日本の商品を専門に扱うフロアが生まれ、人気を集めている。
○ 中国国内市場の急速な変化が始まったのはこの1~2年である。日本の本社でこの変化を実感できている経営トップ、役員はまだ尐ない。中国市場の開拓は中国人に任せるしかない。ところが中国でビジネスを展開する日本企業の中国駐在本部の布陣を見ると、殆どの企業が日本人中心で、中国人が実権を握っている例は極めて尐ない。日本企業は中国ビジネス戦略の抜本的見直しを迫られている。