メディア掲載 財政・社会保障制度 2011.04.12
わが国の地方税をとりまく環境は相変わらず厳しい。税源移譲で税収のパイは拡大したものの、金融危機による世界同時不況の影響やわが国の景気から地方税の滞納は平成19年度以降増加傾向にある。また、不交付団体を除く自治体は多かれ少なかれ地方交付税に依存しているが、国の財政も相変わらず厳しく、平成21年度から国債発行額が税収を上回っており、消費税率の引き上げの議論が再燃した。昨年の参院選の争点となり、民主党が敗れたのは記憶に新しい。平成23年度税制改正法案では所得税、環境税、相続税で増税が示された。
海外に目を転じてみれば、世界同時不況の影響を受け、米国や欧州の経済も軒並み停滞している。昨年春のギリシャの破綻の余波も大きく、PIIGSと呼ばれる、ギリシャを除く残りの欧州の国も破綻が懸念されている。昨年のG20で先進国は2013年までに財政赤字を半減することが宣言されたが、わが国は例外扱いされている。それだけ財政赤字が大きいことが国内外で認識されていることを表している。増税とさらなる歳出削減を同時に行わなければ財政赤字の縮小は達成できないだろう。
このような厳しい状況の中で、自治体は何ができるだろうか。筆者の問題意識は以下のとおりである。現在のわが国の財政は国債という次世代への借金に依存しており、今後の人口構成や経済発展を勘案すると、このままの状況は続けられないと考える。税負担の増加は避けては通れないかもしれないが、同時に税負担の公平性は追求すべきである。支払われていない税は回収すべきである。罰則強化の道はもちろんのこと、別の方策も検討したほうがよい。あらゆる手をつくすことが今の税務行政に必要である。
本稿では、わが国の新しい税収確保策の議論のきっかけのために、わが国ではまだ採用されていない「タックスアムネスティ(Tax Amnesty)」について学術的研究の変遷と米国州政府へのインタビュー結果から検討する。・・・・