コラム 財政・社会保障制度 2011.03.30
このたびの東北地方太平洋沖地震において被災された地域の皆様に心よりお見舞い申し上げますとともに、被災地の一日も早い復興をお祈り申し上げます。
今回の大震災の復興にはおよそ20兆円かかると言われており、多額の財政支援を捻出するために、政府は国債発行を増額するための公債特例法案を検討中で、今のところ、消費税増税の話は大きく取り上げられてはいない。だが、わが国はこれまでに大量の国債を発行しており、来年度も多くの国債を発行することが決まっている。その上、災害復興分全額を国債で賄うと、国家財政に対する海外からの信認がますます薄らいでしまうことが懸念される。いずれ消費税の増税の話も現実味を帯びてくるだろう。国民の心情からしても震災復興のためとあれば、消費税がアップしてもあまり異論は出ないだろう。筆者も消費税増税は必要だと思っている。だからといって、すぐに消費税を上げればよいと考えているわけではない。消費税の増税は以前から国民にとって重要な関心事であり、消費税には課題がある。制度を見直すのは税率が上がるなどの大きな変化のときがやりやすい。また国民の関心があるので議論が発展しやすい。それゆえに災害復興や被災者の支援のために、国の財源が必要な時だからこそ、あえて消費税の課題について言及しておきたい。
消費税は広く国民が負担することから効率的な税であり、多くの国々が採用している。わが国も平成元年に導入し、当初は国税のみの3%の税率であったが、平成9年に国税を4%に上げ、さらに地方税1%を導入したことで5%となり現在に至る。消費税の課題について、特に逆進性や益税、課税手続き(インボイス)などについて多くの有識者が指摘している。しかし意外と知られていないのが、消費税は滞納が多いという点であり、本コラムではこの点に焦点を当てる。
上記で述べたように、消費税は国税と地方税に分かれているが、納税者は国にまとめて全額を納めることになっており、滞納整理も国が行っている。消費税の滞納額は図1のとおりで、ここ5年をみても毎年7000億円の規模を推移している。平成9年に消費税が5%になった翌年から滞納が大きく増えている。その後、徴収努力で減っているものの、3%だった時代を下回ったことは一度もない。もし税率を上げれば、同じように滞納額も大きくなることは予想できる。ちなみに個人住民税も税源移譲で税収のパイが広がったとたん滞納が増えた。消費税も同じ道をたどらないとはいえない。国民の負担を増やしても、滞納も増えてしまうのでは意味がない。滞納を増やさない手立てを考えることが必要である。次に他の国税も含めた中での消費税の滞納傾向をみる。図2は毎年新たに発生する滞納全体のうち消費税の占める割合の推移である。消費税が5%になった翌年から4割台を占めるようになった。消費税の滞納は国税全体の滞納において大きな位置を占めており、税収のパイが広がれば、今まで以上に滞納整理の焦点となるだろう。・・・・