コラム 財政・社会保障制度 2011.02.10
コンプライアンス(守ること)から | コミットメント(関与・責任)へ |
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達成すべきミニマム・スタンダード | 目指すことができる改善の総和 |
階層のある組織やシステム、標準プロセスを使った統制 | 協調や管理のためにゴール、価値、意見の共有 |
罰則や制裁の恐怖が推進力となる | 共通目的への関与・責任が推進力となる |
組織的な責任 (もし私がこれを行わなかったら、私の業績目標が果たせない) |
協調関係への責任 (もし私がこれを行わなかったら、私のグループやコミュニティが機能しない) |
昨年6月の白書『公平と卓越:NHSを自由化する』にも地方自治と自由裁量について以下のように書かれている。
●患者の選択枠を増やす。患者は必要な情報にアクセスし、自分で健康管理できるようになる。
●「結果による支払(Payment by Results)」を徹底し、透明で安定した仕組みを作る
●地域の役割を拡大する。自治体は医療・介護をつなぐ役目となる
●予算の権限を、家庭医(General Practitioner: 以下GP)を中心とした地域コンソーシアムに80%渡し、NHSと民間医療を競争させる(2012年から)。
●NHS官僚政治をやめさせる。2014年までに200億ポンド節約する。管理コストは45%カットする
●保健省の機能と組織を減らす。存在する必要のない特殊法人を減らす。
キャメロン政権は、これまでの保守党・労働党政権の医療政策を基本的には受け継いでいるが、予算権限を、GPを中心とした地域コンソーシアムに移すことと、保健省の機 能を縮小し、既得権を外し、古い慣習を壊すことを目指している。
NHSを例に示してきたが、財政赤字から脱却するには、構造改革と権力からなる既得権益を小さくすることが重要である。古い体質では、グローバル社会の中で柔軟に対応し 、生き残っていくのは難しいだろう。わが国でも社会保険庁の記録問題や談合、入札の問題などが発覚し、以前から既得権益の問題は議論されているが、大きく変えるところ までは至っていない。
しかしイギリスはこのグローバル社会の中で生き残るために、構造改革に手をつけたといえる。また地方自治を進めるには、中央政府の役割を縮小しなければ、地方の自立 ができず、目標が達成できないし、中央・地方合わせると予算も大きくなってしまうだろう。道州制を視野に地方自治を進めているわが国にもおいても、イギリスの舵取りは 参考になる。
参考文献
Gary Belfield and Helen Bevan (2010) The Transformation of England's National Service
Department of Health (2010) Equity and excellence: Liberating the NHS
HM Treasury (2010) Spending Review 2010, Cm7942