メディア掲載 財政・社会保障制度 2011.01.19
地方税をとりまく環境は相変わらず厳しい。金融危機による世界同時不況のあおりやわが国の景気も影響し税収が伸び悩んできた。このような状況下で地方税の滞納は平成19年度以降増加傾向にある。平成14年度から平成18年度にかけて縮小傾向にあったが、再び増加した。滞納が増加したのは個人住民税である。平成19年度は税源移譲が始まった年である。税収のパイが広がった分、滞納も増える可能性があるわけだが、それが現実化した。
さらに税だけでなく、自治体全体をみてみると、国民健康保険料や介護保険料、保育料、住宅使用料などさまざまな未収金を抱えている。個人住民税の滞納が増えたということは、何らかの理由で、生活者である住民の生活が変化したとみることができる。そうであれば、国民健康保険料や介護保険料、保育料、住宅使用料なども滞納している可能性は高い。
多額の未収金は財政を悪化させるだけでなく、納付をきちんと行っている住民に対しても不公平を生じさせている。このまま不公平な状態が続けば、住民がモラルハザードを起こし、徴収事務自体への支障が出てくることも懸念される。
本来であれば各課で徴収することが望ましいだろう。努力や工夫によって改善できるところもたくさんあるだろう。しかし、自治体の財政状況や自治体に対する住民の注目の高まりなどから、財政の健全化は急がれており、いかに効率的に徴収できるかが一つのカギとなる。公金一括徴収は効率化を図るための一つのやり方である。
平成14年度から平成18年度の徴収の回復には、景気回復の影響もさることながら、その間、電子申告、コンビニ収納、マルチペイメントネットワークによる電子収納、クレジット収納といった収納チャネルの拡大や、インターネット公売の導入、電話催告などの一部民間委託など、あらゆる手段を活用し、徴収率を上げるべく自治体は取り組みを行ってきたことが大きく寄与している。効率化にむけて、このような不断の努力をさらに続けるべきである。
本稿では、税を含めた自治体の財源となる未収金を効率的に回収する策として、公金一括徴収を取り上げる。公金一括徴収の意義と現在の自治体の状況を整理し、課題についてできるだけ取り上げたいと考えている。・・・・