コラム  国際交流  2010.11.25

日中関係悪化の現地日本企業への影響は極めて軽微、中国経済は力強い拡大を持続<北京・上海・鄂尓多斯(オルドス)現地取材報告(2010年10月24日~11月4日)>

<報告内容の主なポイント>

○ 9月18日に行われた北京の日本大使館、上海総領事館前などでの抗議デモ後、沿海部主要都市では中国当局により反日デモの動きが封じ込められており、表面的には日中関係悪化以前と比べて特に変化が見られていない。内陸部では10月入り後、いくつかの都市でデモが起きたが、いずれも小規模。

○ 今回は政府の情報統制が厳しく行われていることもあって、そもそも反日デモが起きていること自体知らない中国人も多い。

○ 貧富の格差拡大、役人の不正・腐敗等への不満など、現政権の統治に対する不満が蓄積しつつある中で反日デモを容認すれば、容易に反政府行動に転化する可能性がある。中国政府はそうした社会情勢を十分考慮して、反日デモの徹底した封じ込めを図ったと見られている。

○ 今回の日中関係悪化について、現地の日本人駐在員は、仕事面では「反日デモの影響は見られていない」と口を揃えているほか、生活面でも恐怖感を感じていないなど、前回反日デモが起きた2005年とは大きく異なる捉え方をしている。

○ 2005年の反日デモの時は日本国内と現地の受止め方の間に温度差はなかった。しかし、今回は日本国内のうろたえ振りと現地の中国人や駐在日本人の冷静さが際立った対照をなしている。日本企業の多くの現地駐在員は日本のメディア報道が中国国内の状況を正確に伝えず、日本国内において誤解に基づく対中不安感や反中感情を煽っていることに対して強い不満や憤りを感じている。

○ 足許のマクロ経済情勢は順調な景気拡大が持続している。そうした状況下、唯一の懸念材料は物価上昇リスクが若干高まりつつあることである。

○ 中国人民銀行の利上げ(10月19日)の目的は、先行きのインフレリスクに対する警戒を促すための「信号」を出すことであった。これにより、金融政策スタンスは2008年11月以来続いた金融緩和からほぼ中立へと戻すことになると考えられる。

○ サービス産業を中心とした日本企業の対中直接投資の増加傾向は現在も続いている。現地の邦銀幹部は、今後当分の間この勢いは止まりそうにないと見ている。

○ 第12次5カ年計画は、経済政策面では第11次5カ年計画をほぼ踏襲する方向である。一方、社会政策面では、所得分配の公平化、社会保障の充実、都市化=戸籍制限の緩和に重点を置いており、これらの課題への取組姿勢を積極化させると見られている。

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