コラム  国際交流  2010.10.08

中国漁船衝突問題に対する米国有識者の見方について<米国出張報告(2010年9月22日~10月1日)>

今回の出張では、9月7日に発生した中国漁船衝突問題に対する米国有識者の捉え方、日本政府が今後採るべき対応策、今回の事件を踏まえた今後の日米協力のあり方等について外交・安全保障問題の専門家等の方々と意見交換を行いました。その中で興味深いと思われた見方につき以下の通り整理しましたのでご報告します。


<報告の主なポイント>

○ 日本政府が当初、国内法の原則に則った措置を採った判断は適切だった。それを途中で修正したのは的確な措置ではなかった。日本政府は今回の件で謝罪や賠償の要求には応じる必要はない。

○ 中国は短期的には強圧的な対日外交が奏功して、日本側の譲歩を引き出すことに成功した。しかし、中長期的には中国の今回の対応を見た周辺国が中国の脅威をより強く意識し、警戒感を強める方向に動くことになる。中国は自国の海岸線に沿って、北から南まで、全ての地域で周辺国の反発を招く行動をとったことになる。以上の点を考慮すれば今回の事件で最大のダメージを受けたのは中国自身である。

○ 最近中国の拡張主義的外交政策が目立ってきている背景は、①中国の力の過大評価と米国の力の過小評価、②中国人の意識の変化(経済発展を成功させた現在、もう我慢する必要はなくなった)、③海洋政策に対する解放軍の影響力の高まりなどである。

○ 日本政府が今回のような一貫性を欠いた外交を繰り返さないようにするため、今後採るべき対応としては、①官邸におけるNSC(国家安全保障会議)の創設、②インテリジェンス機能の強化、③周辺関係国との対話、④日中両国間で類似の問題への対処方針を話し合う、⑤日米韓の防衛協力の強化、⑥民主党の政権政党としての経験の積み重ねなどが考えられる。

○ 将来の日中関係融和策としては、①不測の事態が生じた際の事態収拾のための日中協力の枠組みの確保、②経済的文化的な交流の促進、③両国の融和派同士の協力などが考えられる。

○ 今回の事件を踏まえた今後の日米協力のあり方として、①海洋問題に関する対話の増加、②インテリジェンス、兵站補給、財政支援面での協力強化に加え、③日本国民自身の安全保障問題への問題意識を醸成することも望まれる。

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中国漁船衝突問題に対する米国有識者の見方について<米国出張報告(2010年9月22日~10月1日)>