コラム 国際交流 2010.08.10
<報告内容の主なポイント>
○ 第2四半期の実質GDP成長率は10.3%と、前期(11.9%)に比べ1.6%ポイント低下した。これについて、中国中央政府内のマクロ経済政策部門の高官、現地の日本人・中国人エコノミスト等は、春先まで過熱のリスクがあった状況が改善し、安定的な高度成長軌道に入ったとプラスの評価をしている。
○ 年後半については、先進国向け以外の輸出が伸びるが、輸入も堅調に推移するため、貿易黒字は1000~1200億ドルと今年も前年比縮小する。しかし、実質GDP成長率への外需のマイナス寄与度は昨年(-3.9%)ほど大きくなく、せいぜい-1%ポイント程度にとどまると見られている。一方、内需は安定的に推移すると予想されており、物価上昇圧力はそれほど高まることはないとの見方が大勢。
○ 不動産市場については、4月に発表された不動産価格抑制のための国務院通知を機に、不動産取引が厳しい制約を課されたことから、5月以降不動産取引量は急減した。不動産価格については、価格上昇がとくに目立った北京では新築マンションがすでに20%程度下落した例が見られるが、取引量の減 \ほど大きな影響は見られていない。なお、財政収入の20%~40%を不動産開発収入に依存している地方政府にとっては大幅な収入減となるため、この政策に対する地方の不満は強い。
○ 重慶では労働需給が逼迫し、ワーカーレベルの賃金水準が1800元/月に達しており、深3Wや東莞の比較的低賃金のワーカーとほぼ同レベルとなっている。これは内陸部の主要都市でも低賃金労働力の確保がすでに困難化していることを示している。
○ 中国現地の日本企業は今後、①第4次対中投資ブームの到来を背景とする事業展開の拡張、②ワーカーレベル賃金の大幅上昇により生じるコスト上昇を吸収するための合理化・省力化投資の積極化など、新たな設備資金需要が生じることが予想されている。しかし、邦銀各行は中国金融当局による預貸比率規制の制約があるため、貸出を伸ばしたくても伸ばせないという問題に直面している。外資系銀行ではリテール業務への参入規制を残したまま、中資系と同じ預貸率規制を守ることを義務付けるのは無理があるとして、規制緩和を要望している。