コラム  国際交流  2010.07.26

広東省におけるストライキの拡大とその影響<広東省現地取材報告(2010年6月28日~30日)>

 【報告の主なポイント】

<事実関係>

○ ストライキ拡大の問題がメディアで大きく取り上げられたのは本年6月以降であるが、そうした事態に至る一連のストライキは昨年の6月に始まっていた。
○ 本年入り後、賃金引上げ率が広東省の最低賃金引上げ率を下回った企業での不満が強まった。そうした情報が携帯電話のショートメール等の手軽な通信手段を利用することによりタイムリーかつ広範に周辺工場の従業員の間で共有されたことが不満を増幅した。
○ ある完成車メーカーの強気の交渉姿勢が部品メーカーでのストライキの長期化を招き、結局完成車メーカーの工場まで操業停止に追い込まれた。
○ 深3、東莞等のプリンター、PC、デジカメ等電子・電機関連の加工貿易メーカーに同様の問題が波及するのは時間の問題と見られている。

<背景、原因>
○ 今回ストライキによる賃金引上げ要求の動きが拡大した背景には、①沿海部における労働需給の逼迫、②労働契約法施行後の労働者の権利意識の高まり、③新世代農民工の考え方などの要因が影響している。
○ ストライキを起こした従業員の基本的な不満は給与水準の格差に対する不満であると考えられている。そこで問題とされる給与格差とは部品メーカーと完成車メーカーの格差、あるいは日本人従業員と中国人従業員との格差である。
○ ストライキの発生を防ぐことができなかったマネジメント上の要因は、現地工場の日本人幹部と中国人従業員との間のコミュニケーション・信頼関係の不足、現地工場への権限移譲の不足といった日本企業特有の問題にある。

<対応策>
○ こうした事件の再発を防ぐためには、本社サイドの抜本的な意識改革が必要である。具体的には、現地トップとして派遣する人材の人選に際し、①現場でのリーダーシップ、コミュニケーション能力、危機管理能力等を重視すること、②現地工場への十分な権限移譲を徹底することなどが重要ポイントである。
○ 一部のメーカーでは沿海部の賃金上昇が今後も続くことを予想し、賃金の安い内陸部やベトナム等に新工場を建設している例が増えてきている。一方、合理化・省力化投資による生産効率向上に注力していく方針を固めているメーカーもある。

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広東省におけるストライキの拡大とその影響<広東省現地取材報告(2010年6月28日~30日)>