コラム 国際交流 2010.05.15
<報告内容の主なポイント>
○ 本年第1四半期のGDP成長率が11.9%に達したことは、やや高めではあるが概ねエコノミスト等の予想の範囲内だった。先行きについては、今後四半期ごとに徐々に成長率が低下し、年間の成長率は10%台前半に着地するとの見方が多い。足許の景気はやや過熱気味ではあるものの、過熱感は徐々に後退していくと見られている。
○ 中国経済は今年も昨年に続き内需主導の成長となる見通しである。この内需拡大を地域別にみると、成長の主役は沿海部ではなく内陸部である。これまで内陸部の成長の原動力は資源価格の上昇による所得増大にあった。今後は交通物流インフラ建設による産業集積の拡大や都市化の進展による投資、雇用、消費の増大が主要な原動力となっていくと考えられる。
○ 本年入り後、日本からの対中直接投資が件数・金額とも増加に転じているほか、中国の市場調査のために中国を訪問する日本企業の幹部も急増している。こうした日本企業の対中ビジネススタンスの急速な変化から、日系金融機関等では第4次対中投資ブームの到来を実感している。
○ 日系企業による内陸部における工場建設の事例はそれほど多くないが、内陸部の市場に対する関心は高い。香港・台湾系企業が沿海部に比べて低賃金で豊富な労働力を求めて生産拠点の内陸部へのシフトを進めているのに対して、日系企業は内陸部における販路拡大を主目的に内陸部への進出を進めている。
○ 内陸部市場での販路拡大を狙っている自動車、家電等の日系企業は、中資系企業の低価格製品との競争を余儀なくされている。こうした企業では内陸部の市場ニーズに合わせた過剰スペックの削減と大幅なコストダウンを実現するため、新たな技術開発に取組む必要に迫られている。同時に、低価格製品市場に参入しても高品質を売り物にした企業自身のブランド価値を維持するための販売戦略構築という経営課題にも直面して悩んでいる。
○ 不動産価格上昇の実態は統計データの伸びをはるかに上回っている。北京・天津両市の市街地では昨秋以降わずか半年強の短期間に住宅価格が2倍近くにまで上昇した。これは1980年代半ばの東京における不動産バブルのピーク時の勢いにほぼ匹敵する。国務院(中央政府)もこれを問題視し、本年入り後、一連の不動産価格抑制策を打ち出しているが、抜本的な解決策にはならないと見られている<補論>。