コラム  財政・社会保障制度  2009.11.26

地域医療経営のガバナンスの国際比較(第5回)オーストラリア<その(1):医療制度の概要>

Monthly IHEP 2009 11月号No.181
はじめに
オーストラリアは、医療財源確保と医療提供体制を公的制度中心とした上で民間医療保険と民間病院を積極活用する仕組みを採用している。図表1は、オーストラリアの医療制度の基本的枠組みを示している。国が医療財源確保に責任を持つ一方、州政府が医療提供体制の整備、運営を担う仕組みであり、国と州政府の役割分担は国・州政府間の契約で明確にされている。この契約は2009年6月までオーストラリア医療協定(Australian Health Care Agreements)と呼ばれていたが、同年7月から国家医療協定(National Healthcare Agreement)と名称を改められ、その内容も拡充された。これは、2010年までに国と州政府の役割分担を見直す次の医療改革合意に
向けた措置でもある。
図表2のとおり、オーストラリアの総人口は2,164万人であるが、シドニー、キャンベラのあるニューサウスウェールズ州(人口704万人)、メルボルンのあるヴィクトリア州(同536万人)に比べて他州の人口密度は低く、地域によって医療提供体制のあるべき姿が大きく異なる。そのため、医療提供体制の整備、運営について州政府に裁量権が与えられているわけだが、州間の違いは地域医療を担う医療公営企業のガバナンスの仕組みにも現われている。
オーストラリアの医療費は、2006年度(2005年7月~2006年6月)869億豪ドルであり名目GDPの9%を占める。これは1996年度の7.5%から1.5ポイントの上昇である。ちなみに、1996~2006年度の10年間における名目GDP平均成長率が6.4%であったのに対し、同期間における医療費の平均増加率は8.3%であった。ただし、この医療費の名目GDP比9%はOECD諸国の平均値であり10%を超えているフランスやドイツよりも低い。また、OECDインディケータ(2007年版)によれば、オーストラリアの平均寿命は2005年時点で日本、スイス、アイスランドに次いで世界第4位である。つまり、オーストラリアは、州政府に裁量権を与える仕組みの下で医療制度全体の運営が比較的上手くいっていると評価できる。
したがって、オーストラリアが行ってきた医療改革の論点は、わが国の民主党が公約として掲げている都道府県単位の地域保険構想に参考になることが多々あると思われる。そこで、本稿第5回ではオーストラリアの医療制度の概要を記し、次稿第6回に医療公営企業を核にした州政府による地域医療経営のガバナンスについて解説することとしたい。

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