分担執筆 山下 一仁 他
出版社 慶應義塾大学出版会
ISBN 9784766422627
価格 本体3,200円+税
発行 2016年1月初版
山下 一仁
Kazuhito Yamashita
研究主幹
これまで経済政策について述べられてきた本は、経済学の理論から出発して容易に説明したり分析したりできる事柄や政策を主に扱ってきたのではないだろうか。つまり大学にいる経済学の教授が扱いやすいテーマに限られてきたのではないかと思われる。このため、社会の第一線で実際に経済政策を担当している人たちは、物足りなさを感じていたはずである。
本書のアプローチはその逆である。現実に発生している問題から出発して、それを経済学の手法でどのように分析し、解決するかというアプローチをとっている。もちろん経済理論が軽視されているのではない。読者は経済学の基礎的な理論が現実の問題解決に具体的に適用されることにわくわく感をもたれるに違いない。こうであってこそ、経済学は経世済民の学たり得るのではないだろうか。
本書では、それぞれの分野の専門家が、エネルギー問題、環境問題、少子高齢・人口減少社会における社会保障、世界的な分業構造の転換のなかでの産業政策、政策転換を迫られている日本農業、非正規雇用比率が上昇している労働市場などについて、理論的背景、制度的問題点、今後に向けた方向性をバランスよく解説している。
山下一仁研究主幹は、農業政策について、なぜ農業を保護する必要があるのか、そのためにはいかなる政策をとるべきなのかについて、基礎的な経済学の手法を用いて分析している。
理論や政策に関心のある経済学部の学生はもとより、現実に発生している問題を基礎的な経済理論でどのように分析・解決できるかということに関心を持たれている人に、お勧めの一冊である。