フューチャー・デザイン

【FDW81】未来世代の制度化をめぐる近年の議論とその課題―当事者としての回顧と今後あるべき姿の検討―

小林 誠道(株式会社オシンテック コンテンツコーディネーター/ESD担当)、菅原 慎悦(関西大学社会安全学部准教授)

日時

2025年7月10日(木)16:0017:30

内容

近年各所で試みられる,未来世代にとって望ましい社会や環境とは何かを検討し,政策決定プロセスに未来世代への配慮を組み入れようとする制度や組織のあり方,およびこのような議論の方向性を「未来世代の制度化」と呼ぶ。本研究では、未来世代の存在論をめぐる哲学的議論を参照した上で,「未来世代の制度化」を強く志向する近年の議論が捉えきれていない点を検討し,未来世代へのより適切な配慮のあり方について考察を深めた。特に「未来世代の制度化」が論じられるようになった背景と,その実践に向けた取り組み事例およびその評価を概観し,未来世代の権利や現世代の責任をめぐる哲学や倫理学の重要文献から,特に未来世代の「定まらなさ」や不可知性に着目して議論を整理した。

発表者(小林)は大学生の3年間気候変動問題に関する若者を中心とした市民運動に参加する中で「未来世代の制度化」の必要性を主張していた当事者でもある。気候運動の世界的な高まりに影響を受けた日本の若者と行動を共にし,政策や行政機関にも影響を与えることができたが,当時の活動を批判的に回顧する思いを持ちつつ,改めて未来世代への配慮を検討したのが本稿(リスク学研究34巻3号p. 121-133)である。発表では後半に本研究の原点ともなった自身の活動経験と併せ、改めて未来世代への配慮の在り方を検討する。

発表者

小林 誠道(株式会社オシンテック コンテンツコーディネーター/ESD担当)

菅原 慎悦(関西大学社会安全学部 准教授)